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レジャー時間に運動する人はがんになりにくい?米で論文

1時間のサイクリングは8メッツの身体活動量
1時間のサイクリングは8メッツの身体活動量(C)日刊ゲンダイ

 適度な運動は健康の維持・増進に大切だと考えられています。そんな中、余暇活動(仕事以外のレジャー活動)における運動量と、がん発症リスクの関連について検討した研究論文が、米国臨床腫瘍学会誌2019年12月号に掲載されました。

 この研究は、身体活動の強度を示す代謝当量とがん発症リスクの関連について、過去に報告されている9件の研究データを統合解析したものです。代謝当量とは「運動の強さ」を表す単位のことで、安静時を1メッツとして、その2倍の酸素を消費する運動は2メッツと表現します。なお、1時間のサイクリングは8メッツの身体活動量に相当します。この研究では、余暇活動における代謝当量が週に1時間当たり0メッツの人を基準として、米国で推奨されている運動量7・5~15メッツの人におけるがんの発症リスクが検討されました。

 統合解析に含まれた被験者の総数は75万5459人、約10年にわたる追跡調査がなされていました。その結果、余暇時間における身体活動が0メッツの人と比較して、7・5~15メッツの人では、男性の大腸がんで8~14%、乳がんで6~10%、子宮体がんで10~18%、腎臓がんで11~17%、肝臓がんで18~27%、骨髄腫(血液のがん)で14~19%、女性における非ホジキンリンパ腫(リンパ系のがん)で11~18%、統計学的にも有意にリスクが低下しました。

 もちろん余暇時間の運動量が多い人は、そもそも健康であった可能性はあります。したがって、運動が直接的にがんのリスクを低下させているわけではないかもしれません。とはいえ、適度な運動はがんの危険因子である肥満予防にも効果的です。余暇活動を楽しみながら継続的な運動をすることが健康の秘訣かもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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