上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

冬は血圧が下がりすぎて病院で倒れる高齢者が増える

順天堂大学医学部心臓血管外科の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 寒い季節になると、病院で急増するトラブルがあります。午前11時くらいから午後1時ごろまでの間に、院内で突然倒れる高齢者が1週間に2~3人のペースで続出するのです。患者さんに緊急事態が起こったとき、ほかの患者さんにはわからないように隠語を使った「スタットコール」と呼ばれるスタッフ向けの院内放送が流れます。冬場はそれをよく耳にします。

 急に院内で倒れる患者さんは、外来診察のために朝早くから受け付けを済ませて並び、2~3時間待ってからやっと診察を受け、薬を処方してもらってから院内にある休憩所や喫茶店に立ち寄って一息ついた途端、フーッと気が抜けてしまうのでしょう。すると、血圧が一気に下がって気を失ってしまうのです。

 血圧というと高血圧ばかりがクローズアップされますが、低血圧も甘く見てはいけません。血圧が低いことそのものは、高血圧のようにほかの病気には直接つながりませんが、めまい、立ちくらみ、頭痛、全身の倦怠感といった症状が起こり、失神して転倒するケースもあります。命に関わるような大きな事故につながるリスクがあるのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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