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牡蠣には余計な塩分加えずにうま味を味わい生活習慣病改善

牡蠣とネギとの土鍋焼き(右)と牡蠣のオイル漬け
牡蠣とネギとの土鍋焼き(右)と牡蠣のオイル漬け(C)日刊ゲンダイ
旬を食す(3)牡蠣

 今回は旬の牡蠣を、ネギとの土鍋焼きとオイル漬けにします。

 牡蠣には生食用と加熱用がありますけど、わたしは加熱用の方が味が良いように思います。

 最初に使う塩は、あくまでも汚れを落とすため。土鍋焼きの方は香りづけに醤油とバターを少量、加えるだけ。オイル漬けの方は塩気を加えません。塩気は牡蠣自体に含まれているもので十分。牡蠣そのもののうま味を味わってもらいたいですし、余計な塩分は体にもよくありません。

 オイル漬けは、炊きたてのご飯とまぜれば「牡蠣ご飯」として召し上がれます。牡蠣を漬けたオリーブオイルは、パスタに利用できます。密閉容器に牡蠣が完全に隠れるまでオイルを注ぎ、冷蔵庫に入れておけば1週間は保存できます。旬の時期に作り置きをするのもよいですし、使い勝手がいい料理です。

 牡蠣が「海のミルク」と呼ばれるのは身が乳白色であることに加え、牛乳のように栄養が豊富だからです。

 心臓病や高血圧症など多くの生活習慣病の改善作用のあるタウリン、老化防止作用のある亜鉛に加え、貧血防止効果のある鉄、動脈硬化や認知症予防に効果のあるビタミンB12などがタップリ含まれています。

 旬の牡蠣は身がプリプリと太って、それだけ栄養も豊富ですから、ぜひ、ご家庭でもお召し上がりください。

■ネギとの土鍋焼き

《材料》 
◎加熱用の牡蠣  5~6個
◎粗塩  小さじ1
◎酒 大さじ3
◎ネギ 2分の1束を斜めに1センチ幅で切る
◎コショウ 少々
◎バター 大さじ1
◎醤油 小さじ1

《作り方》 
 ボウルに入れた牡蠣を粗塩とよく合わせ、汚れを粗塩に移す。冷水を入れ、ふり洗いをして汚れを落とす。平ザルに取り、水気を切り、酒と合わせる。小さめの土鍋、またはアルミホイルなどに、まずネギを敷き、牡蠣を並べる。蓋をしてオーブンで220度、または魚焼きグリルに入れて10分ほど焼き、コショウ、バター、醤油を上にのせていただく。

■オイル漬け     
 加熱用の牡蠣10個(適宜)を粗塩で洗い、牡蠣がひたひたになるように酒を加え30分置く。しっかり加熱したフライパンに牡蠣を1個ずつ入れ、内臓が膨らんだら上下を返し(写真)、保存瓶に入れ、オリーブオイルを牡蠣が漬かるぐらいに張る。このとき鷹の爪とニンニクを加えるとよい。

▽松田美智子(まつだ・みちこ)女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事 」「調味料の効能と料理法」など。

牡蠣の内臓が膨らんだら上下を返す
牡蠣の内臓が膨らんだら上下を返す(C)日刊ゲンダイ
糖質、アミノ酸、鉄分…プリッとした肝臓に豊富なうま味成分

 私は、ニューヨークのロックフェラー大学で客員教授をしているので、しばしばニューヨークに行くのだが、その際の楽しみは牡蠣を食べること。有名なのはグランドセントラル駅にあるオイスターバーだが、街場の小ぶりなレストランでも、いつでも食べられる。

 日本では、牡蠣の旬は秋から冬で、Rのつかない月(May~Aug)は食用に適さない、といわれているが、米国ではこの話を聞いたことがない。米国人の知人に言うと怪訝な顔をされる。これは日本で主に食べられるマガキの産卵期が夏の時期にあたり、このとき貝の卵巣と精巣が肥大して身がやせてしまうからだろう。しかし最近は品種が増え、この時期にもおいしく食べられるものも多い。実際、米国では、kumamoto、umami、shibumiといった日本名のついた小ぶりな牡蠣が好まれている。

 牡蠣の身のいちばんプリッとした部位は肝臓である。肉でもレバーには独特の風味があるように、牡蠣の肝臓にもグリコーゲン(糖質)、アミノ酸、鉄分などのうま味成分が豊富に含まれ、複雑なおいしさを形づくっている。レモンやラディッシュなどの薬味を少々のせて、白ワインを合わせると最高である。牡蠣の生食で怖いのは「あたる」ことだが、これは海水や餌に由来する大腸菌やノロウイルスのせい。生産者も衛生管理を徹底し、また出荷前には清浄な水に置くことで、極力感染を防ぐ努力をしている。どうしても心配な人は、カキフライや焼いたものを召し上がれ。これはこれで十分魅力的。煮ても焼いてもおいしいのが牡蠣である。もちろん栄養価も満点だ。

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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