精密機械といわれた広島のエースを襲ったがん報道には驚きました。野球解説者の北別府学さん(62)は20日、自らのブログで成人T細胞白血病であることを告白。2年前の検査で発覚した時は、「しばらくは何も手が付かない状態」だったそうです。
それでも仕事を続けながら、毎月の定期検査で経過観察。昨年11月の検診から白血球の数値が上昇し、21日から抗がん剤治療をスタートし、その後は骨髄移植に移る予定のようです。
前宮城県知事の浅野史郎さん(71)も、2005年に献血をした時の血液検査で同じ病気が発覚。骨髄移植が成功し、今も元気に活躍されています。診断から経過観察していた浅野さんが治療に踏み切ったのは09年、60歳の時でした。北別府さんと2年違いなのは、この病気の特徴の一つを端的に示しています。
この病気は、HTLV―1というウイルス感染が原因。白血球の中でがん化した成人T細胞白血病(ATL)細胞が無制限に増殖することで発症します。
感染経路として大きいのが母子感染で、浅野さんの母もHTLV―1感染者だったそうです。ウイルスは母乳に含まれていると考えられていて、母親が感染者だと、20~30%の子供が感染するといわれます。子供への感染を阻止するには、検査でウイルスの有無を確かめ、授乳をやめれば、リスクはほとんどありません。
■ウイルス感染が原因で潜伏期間は50年
輸血は、血液製剤の検査の厳格化で感染リスクはなくなりました。セックスで感染した後に発症したという報告もありません。
このウイルスの潜伏期間は30~50年と長く、若い方での発症はまれ。年齢とともに増加し、60歳くらいをピークに減少します。浅野さんと北別府さんが60歳を越えて発症したのは、この病気の特徴に合致するのです。
感染者は九州や沖縄に多く、北別府さんも鹿児島県出身。このエリアを中心に全国に120万人の感染者がいると推計されますが、発症するのは1万人に6人程度と少ないのです。
万が一、発症すると、首や脇の下、脚の付け根などのリンパ節が腫れたり、免疫力の低下で風邪や肺炎にかかったり。赤血球や血小板の造血が妨げられると、倦怠感や動悸、鼻血や歯茎からの出血を招いたりします。
北別府さんは貧血やだるさ、リンパ節の腫れなどがなく、軽い免疫力の低下で済んでいたのでしょう。
この病気には5つのタイプがあり、進行が遅いタイプなら発症後も経過観察で済むケースもありますが、そうでなければ抗がん剤と骨髄移植に。骨髄の提供者が見つかって、移植がうまくいけば、浅野さんのように治癒が期待できます。北別府さんの復活を望むばかりです。