がんと向き合い生きていく

がんの「休眠療法」は有効性がいまだ科学的に証明されていない

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「患者さんが、がんの『休眠療法』を受けると言っています。体にやさしい治療法らしいのです。この治療法、先生はどう思われますか?」

 友人医師からこんな相談がありました。

 私は「え? もう、行われなくなったはずの休眠療法が、まだ行われているのか」と驚きました。

 休眠療法とは、まだ分子標的治療薬が存在せず、標準治療などという言葉もなかった20年以上前に一時的にはやった抗がん剤の治療法です。

 この治療法は抗がん剤をごくごく少量で行います。たとえば、あるがんに対してシスプラチンという抗がん剤を通常は1回50ミリグラム使うとすれば、10分の1の量の5ミリグラムを使う……といった具合です。

 シスプラチンは20世紀の抗がん剤治療では最大の効果が得られた薬で、他剤との併用で肺転移のある睾丸腫瘍では70%以上の患者が治癒し、その他各種のがんでも多大な効果が得られました。しかし、嘔気・嘔吐・腎障害などの副作用が強かったのです。これに対し、ようやく効果的な制吐剤が出始めてきた時代に、この休眠療法が出てきたのでした。

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佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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