白内障「多焦点眼内レンズ手術」値段が大幅増加する人たち

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 白内障で手術を検討している人は、早めに眼科医に相談した方がいいかもしれない。入っている民間医療保険の内容によっては、自己負担額が大幅に増加する可能性があるからだ。二本松眼科病院(東京・平井)の平松類医師(眼科専門医)に話を聞いた。

■手術前にチェックすべきことは?

 白内障は、目の水晶体が白く濁る病気だ。水晶体はカメラのレンズのような役割を担っているため、物が見えづらくなる。

 根本的な治療は唯一、「手術で水晶体を取り除き、眼内レンズを入れる」という方法だけだ。眼内レンズには単焦点と多焦点があり、前者は健康保険適用、後者は保険適用外だ。

「しかし、多焦点眼内レンズは先進医療の対象なので、民間医療保険の先進医療特約に入っていれば、今はほぼ無料で治療が受けられます(保険によっては違う)。ところが4月から、選定療養に位置付けられる可能性が高いため、片目につき30万~70万円かかるようになります。“手術を受けようかな”と思っている人は実行に移すいいタイミングでは? しかし、白内障手術は簡単な手術ではありませんし、見え方に関わるので、“無料のうちに”と焦って手術を受けることはお勧めしません」

 手術で後悔しないために、白内障と診断されたら何を検討すべきかを次に挙げよう。

①点眼薬か、何もしないか、手術か?

「生活に不具合を感じた時が、白内障手術の検討をすべき時です。点眼薬は進行を遅らせますが、止めるわけではないので、あえて放置して悪くなったら手術、というのもありです」

②手術にするなら、保険適用か、適用外か?

「保険適用でないと、と考えるなら単焦点眼内レンズになります」

③保険適用の有無にこだわらず、自分に合ったものを選ぶなら?

 単焦点眼内レンズは、遠方か中間、近方などに焦点を合わせる。合っていない方を見る時はメガネを使う。多焦点眼内レンズには「3焦点」「2焦点」「焦点深度拡張型」がある。

 3焦点は遠方、中間、近方の3点に焦点を合わせ、メガネがほぼ不要になる。2焦点は遠方と中間、または遠方と近方の2点に焦点を合わせ、中間が見にくい。焦点深度拡張型は遠方、中間、近方が見えるが、読書など近方を長時間見る時はメガネが必要。

■左右で異なる眼内レンズも可能

「それぞれ一長一短があります。例えば3焦点や2焦点は特に強い光をまぶしく感じるなどのグレアハロー、濃淡がはっきりしないコントラスト感度の低下が起こる可能性があり、患者さんの1割近くは『何だか不調』、1~2%は『眼内レンズを取り換えたい』と訴えます。半年ほどすれば慣れることもあるので、様子を見る場合もあれば取り換え手術を検討する場合もある。ただし、レンズの取り換え手術は白内障手術より難易度が高く、合併症のリスクも高まるので極力避けたい。だから、何を求めているか慎重に選ぶべきです」

 本当は細かいチェックなどがあり主治医との相談が必要だが、自分が求めていることを知るヒントとして、「夜、運転するかどうか」。運転する人はグレアハローがつらいので、単焦点か焦点深度拡張型が向いている。「手元をはっきり見たい」「メガネをかけたくない」なら3焦点。「手元をはっきり見たい」「メガネを時々かけてもいい」なら焦点深度拡張型。さらに「神経質な性格」なら焦点深度拡張型か単焦点。3焦点や2焦点だと“ちょっとした見えづらさ”も気に病むかもしれないからだ。

「白内障の手術は片目ずつ行うので、例えば最初に単焦点を入れて、もう片方の目はもっと見えやすい方がいいから3焦点にする……など、左右の目で違う眼内レンズを入れるのも可能です」

 さあ、どうする?

 先進医療とは、新しい医療技術に関し、将来の保険適用の評価のため限られた医療機関で受けられるサービスで、保険適用外の分は自己負担、その他の検査料、薬剤医療、入院料は保険適用。白内障の多焦点眼内レンズの場合、先進医療特約に入っていない人は、手術費用と材料費が自己負担になり、片目につき自己負担額40万~60万円。

 一方、選定療養とは保険適用外の治療を追加費用を払って、保険適用の治療と併せて受けること。「差額ベッド代」などがそれに当たる。

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