上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「脳卒中・循環器病対策基本法」では生活習慣の改善を重視

順天堂大学医学部心臓血管外科の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 脳血管疾患と心臓疾患の特徴は、「患者数が多くて死亡率も高い」だけではありません。治療後も機能障害が残るケースが多いため、介護が必要になる原因疾患として、脳血管疾患が16・6%、心臓疾患が4・6%を占めています。両方を合計すると全疾患で最多なのです。

■喫煙と肥満は動脈硬化を促進させる

 脳卒中・循環器病対策基本法によって予算が増え、医療体制の整備が進めば、患者の救命率の向上や予後の改善が大きく前進するでしょう。ただ、それよりも大切なのは普段からの予防です。そのためのカギは生活習慣にあります。基本法の「基本的施策」でも、喫煙、食生活、運動といった生活習慣の改善の重要性が書かれています。

 循環器疾患を招く血管の問題は、生まれつきの血管の異常を除けばほぼ動脈硬化によって起こります。ですから動脈硬化を予防すれば、循環器疾患を食い止めることができるのです。動脈硬化を促進させるリスク因子は高血圧、高血糖、高コレステロールが代表的なもので、それらを引き起こすのが「喫煙」や「肥満」です。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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