やしろ優は全身麻酔で抜歯「親知らず」気になる3つの疑問

抜く?すべて?麻酔は?
抜く?すべて?麻酔は?(C)日刊ゲンダイ

 今月初め、ものまねタレントのやしろ優(32)が「親知らず」の抜歯手術を受けたことを自身のインスタグラムで報告した。全身麻酔による手術を終えた後、痛々しい姿の写真を公開している。親知らずの抜歯はとにかく「激痛」というイメージが強い。やしろも抜くかどうかを6年近く悩んでいたという。できることなら抜きたくないが、抜歯を勧められることも多い。いたずらに痛い思いをしないためにも親知らずについてしっかり知っておきたい。斉藤歯科医院院長の北沢伊氏に詳しく聞いた。

■必ず抜いたほうがいい?

 親知らずは前歯から数えて8番目、奥歯の最も後ろに位置する歯で、18~20歳ごろに生えてくるケースが多い。永久歯の中で一番後に生えてくるため、顎が小さくなった現代の日本人は親知らずが生えるための土台に十分なスペースがなく、横や斜めに生えてきたり、骨の中に水平に埋まったままになってしまう場合もある。歯ブラシも届きづらいので、虫歯になったり、歯肉に痛みが出たり、噛み合わせのトラブルを招きやすい。そのため、親知らずの抜歯を勧める歯科医が多いのだ。やはり、抜いたほうがいいのか。

「上下の親知らずが真っすぐ生えていて正しく噛み合い、適切に歯磨きができている状態であれば、抜く必要はありません。むしろ親知らずを残しておくことで、入れ歯やブリッジの土台として使ったり、インプラントの代わりに親知らずを『移植歯』として使うこともできます」

 ただ、虫歯になっていたり、智歯周囲炎で歯肉が腫れているケースはもちろん、今は問題がなくても、周囲の歯にトラブルを引き起こすリスクがある場合は抜いたほうがいいという。

「親知らずがボロボロになってしまうと処置が難しくなり、大掛かりな作業が必要になってきます。また、親知らずに痛みが出た時点で周囲の歯にもトラブルが起こっていることが多く、親知らずを含めて歯を何本も抜かなければならないケースも少なくありません。親知らずの生え方や状態、きちんと磨けているかどうかも含めて歯科医と相談し、メリットとデメリットを比較した上で、抜くかどうかを判断することが大切です」

■バランスを崩さないようにすべての親知らずを抜くべきか?

 親知らずは上下左右で最大4本ある。どこか1本を抜いた場合、顔のバランスが崩れたり、噛み合わせが悪くなったりするから、残りの歯も抜いたほうがいいといわれるが、必ずしも抜く必要はないという。

「顔の形は骨格で決まるので、顎の骨に生えている親知らずを抜いたとしても、顔のバランスはほとんど変わりません。噛み合わせについても、1本抜いたことで必ず悪くなるわけではありません。仮に下の親知らずを抜いた場合、上の親知らずの“相手”がなくなって噛み合わせが悪くなり、上の歯が下がってきてしまうといわれます。しかし、人間の歯は1対1でがっちり噛み合っているわけではなく、全体的に少しずれがあって2対1の形で噛み合う構造になっています。残りの親知らずが真っすぐ生えていて、噛み合わせに影響がなければ、残りの親知らずは無理に抜く必要はないのです」

 噛み合わせが悪くなっていないかどうかは、咬合紙を使うなどして歯科医に判断してもらえる。

■全身麻酔による抜歯はだれでもできるのか?

 やしろは全身麻酔で手術を受けたという。一般的には抜歯は局所麻酔で行われるが、希望すれば可能なのか。

「極度の歯科恐怖症だったり、スケジュールの都合などでどうしても一度にまとめて抜きたいという場合、全身麻酔による施術も可能です。ただ、全身麻酔を使用する場合には、人工呼吸器や心拍数、血圧、心電図をモニタリングできる機器が必要です。大学病院や総合病院などの設備が整った施設でなければ行えません。一般的な歯科クリニックでは難しいので、どうしても全身麻酔を希望する場合は、担当の歯科医に相談してみてください」

 また、全身麻酔は持病や全身状態によっては受けられないケースがあり、合併症を起こすリスクもゼロではない。慎重な検討が必要だ。

関連記事