Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

長渕剛が母の介護を告白 認知症併発のがんは待機療法も

歌手の長渕剛さん(C)日刊ゲンダイ

 私が生まれた1960年、人口に占める65歳以上の割合は6%程度。しかし、今や高齢化率は世界最高の26%に上昇。20年後には、3人に1人が高齢者になるといわれます。高齢化によって生まれる病気が、がんと認知症ですから、今後、長渕さんのような介護を余儀なくされる人が増えるのは明らかでしょう。

 がん単体での付き合い方は、早期発見・早期治療がセオリーです。検診をきちんと受けて1期で治療を受ければ、95%は治ります。がんになる人は3人に1人が65歳以下の現役世代で発症しますから、仕事と治療の両立も難しくありません。引退後の生活も楽しむことができます。

 しかし、認知症を併発したがん患者さんが増えると、どうなるでしょうか。セオリーが当てはまらなくなるかもしれません。すぐに症状を出さないタイプのがんは、経過観察にとどめ、積極的に治療をしないケースが増えると思います。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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