人生100年時代の歩き方

新型肺炎に感染したら…受診・入院・隔離に関する10のQ&A

チャーター便で帰国した2人は「ほっとした」と語った
チャーター便で帰国した2人は「ほっとした」と語った(C)共同通信社

 新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大。29日にチャーター便で中国・武漢から帰国した第1便206人のうち204人にウイルス検査を実施したところ、40代から50代の男女3人に感染が確認された。1人は帰国後、喉の痛みや38度台の発熱があったが、2人は症状なし。28日に確認された奈良の60代男性は、人→人感染とみられるだけに、危機的状況が迫っている。

 そんな中、新型肺炎は、感染症法に基づく「指定感染症」と検疫法の「検疫感染症」に指定され、施行後は患者の強制入院が可能になる。自分や家族、会社の同僚などが感染したら、受診から入院まではどうなるのか――。

 ◇  ◇  ◇

【Q】奈良の男性は悪寒や咳が見られた。怪しい症状が表れたら、どこを受診すればいいか?

「中国で重症になる人は現時点で大体20%。残りの人は軽症で、奈良の男性も悪寒と咳、関節の痛みの症状で、発熱がありませんでした。新型肺炎でも軽症だと、風邪や軽いインフルエンザのような症状ですから、診断を受けるのは近くのクリニックでいい」(東京医科歯科大名誉教授・藤田紘一郎氏=感染免疫学)

【Q】検査は何をするのか?

 国立感染症研究所のマニュアルには、こう書かれている。優先順位1は上気道と下気道の検査で、上気道は綿棒で口か喉の奥を拭って検体を採取する。インフルエンザの検査でおなじみのアレだ。下気道は、人工呼吸器をしていなければ痰を採取。していれば、カテーテルで気管の吸引液を取る。これらの検体でウイルスの有無を調べる。

【Q】新型肺炎が疑われる条件は?

 疑い例の条件は「37・5度以上の発熱」かつ「咳などの呼吸器症状」があって、「武漢への渡航歴」か「武漢から訪日した人との接触」がある人だ。

搬送先の荏原病院
搬送先の荏原病院(C)共同通信社
陰圧の特別室で家族との面会はガラス越しかTV電話で

【Q】診断されたら、即入院?

 採取された検体は、国立感染症研究所や地方衛生研究所に送られる。ウイルスの検査自体は数時間で判明するが、輸送に時間がかかる。

「指定感染症になると、強制入院が可能。新型コロナの陽性反応が出たら、現時点では指定医療機関に入院する可能性がありますが、軽症の人が少なくありません。入院させるべき症状は、法令に定められていないため、風邪程度でも入院させるかどうかは早急に検討すべきでしょう」(東京医大名誉教授・加藤治文氏=呼吸器外科)

 都内で感染者が搬送された荏原病院と駒込病院も、指定医療機関だ。

【Q】病室内はどうなっている?

 指定医療機関の感染症病床は、感染拡大を防ぐ特別な設備がある。トップレベルのところは全室個室で、専用トイレやシャワーが完備され、排水は消毒してから下水に流す。治療はすべて個室内で行われ、感染の恐れがなくなるまで個室から出られない。病室内の気圧は外より低い陰圧で、室内の空気が外に漏れない。携帯電話の持ち込みはOKだ。荏原病院には、陰圧室が11室ある。

【Q】面会は可能なのか?

「家族との面会は、ガラス越しに行うか、テレビ電話で行うことになります」(加藤氏)

 白血病などで骨髄移植する前は無菌室に入る。そのときの面会も、ガラス越しだ。

【Q】中国から帰国したら、陰性でも自宅待機しないとダメ?

 藤田氏は2003年、SARSが蔓延していたとき中国にいた。

「SARS感染はしていませんでしたが、帰国して2週間ほど自宅待機。今回、チャーター便で帰国して、症状がない方もホテル待機を指示されているといいます。指定感染症になると、就業制限も可能なので、武漢から帰国した人は、症状がなくても、今後は自宅などで待機になる可能性はあるでしょう」(藤田氏)

【Q】指定医療機関のベッドが満床になったら?

「指定医療機関の感染症病床は少ない。新型肺炎の感染者数は、SARSを上回り、感染拡大のスピードが上がっていますから、国内での人→人感染が拡大すると、ベッドが不足する恐れは十分。あるところが満床なら、別のところに搬送することになります」(藤田氏)

 ちなみに東京にある指定医療機関のうち最多の感染症病床(1種と2種の合計)は、都立駒込病院の30床。荏原病院は20床だ。

【Q】家族や会社など接点のある人はどうなる?

「指定感染症になると、濃厚接触者の調査や検査などが行われます」(加藤氏)

 奈良の男性について、感染が疑われる期間に接触したのは104人。そのうち22人が、家族や医療関係者などの濃厚接触者と判明した。

【Q】退院の条件は何か?

「体内からウイルスが認められなくなり、再感染の恐れがなくなれば、退院できます」(藤田氏)

 ◇  ◇  ◇

 簡単な検査キットやワクチンができるのを待つばかりだ。

マスク姿で奈良公園を訪れた観光客ら
マスク姿で奈良公園を訪れた観光客ら(C)共同通信社
指定感染症と検疫感染症

 感染症法では、感染力や重症度によって1類感染症から5類感染症に分類されている。

 1類は、ウイルス性出血熱やエボラ出血熱などで、2類は結核や鳥インフルエンザ、MERS(中東呼吸器症候群)やSARS(重症急性呼吸器症候群)など。厚労省は、新型肺炎を2類相当の扱いにする方針だ。2類を診療できる指定医療機関は、全国に407だ。

 指定感染症になると、知事が感染者に入院を勧告し、従わないと強制入院に。さらに感染者と濃厚接触していた人の調査が可能になる。入院などの費用は公費負担。入院や治療は、感染症指定医療機関で行う。

 検疫感染症は、空港や港などの検疫所で、疑わしい人に検査や診察を指示できるようになる。