遺伝子治療薬はここまで来ている

「キムリア」はすべての白血病に対して使えるわけではない

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 急性リンパ芽球性白血病は、白血球の一種であるリンパ球が成熟しないうちに異常に増殖してしまう病気です。骨髄で増殖したものが白血病、リンパ節で増殖したものがリンパ腫とされています。がん化した細胞の種類によってB細胞性やT細胞性に分けられます。治療は、がん化して異常に増殖した細胞を、薬を用いて減らします。抗がん剤や免疫抑制剤が使われますが、副作用が出たり、薬で白血球を減らすことから免疫力が低下して感染症になりやすく、患者の負担が大きい治療といえます。

 また、薬が効かなかった場合や再発した場合には、治療薬の選択肢が少なくなってしまいます。そのため、新たな治療選択肢としての新薬で、副作用の少ないものが望まれていました。

 こうした状況でキムリアが登場し、CAR―T療法という新たな遺伝子治療法が確立されたことは非常に画期的で、これまで治療が困難だった患者に対する治療の“ブレークスルー”として期待されるところです。

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神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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