日本人で良かった!公的医療保険

米国における乳がん治療の実際<5>日本式医療を守るために

写真はイメージ

 これまで4回にわたり、米国在住の50代の日本人女性Aさんが乳がんを宣告され、治療に奔走する様子をお話ししてきました。「米国だと治療は大変だ」と感じられた方も多いと思います。幸いAさんは手術も乳房形成術も無事終わり、毎週末に趣味のダンスを楽しむ元の生活リズムに戻ることができました。しかし、半年に一度、専門医に経過観察してもらわなければならず、この先も乳がんについて自分で学び、必要な時はお金を支払い、医師のアドバイスを聞き、それを基に自分で決断しなければ誰も助けてくれないという状況に変わりません。

 日本の公的医療保険制度にも問題点はたくさんあります。しかし、米国と比較してみると、誰もが同じ質の医療を無理のない費用で受けられるなど、はるかに優れていると思います。ところがその公的保険制度は今、財政的理由から存続の危機にひんしています。この制度を長く維持するために、私たちはどうすればいいのでしょうか。

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奥真也

奥真也

1962年大阪生まれ。東大医学部卒業後、フランス留学を経て埼玉医科大学総合医療センター放射線科准教授、会津大学教授などを務める。その後、製薬会社、薬事コンサルティング会社、医療機器メーカーに勤務。著書に中高生向けの「未来の医療で働くあなたへ」(河出書房新社)、「人は死ねない」(晶文社)など。

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