専門医が教える パンツの中の秘密

“袋”に水がたまる「陰嚢水腫」って何?精巣がんとの違いは

乳幼児によく見られるが…(写真はイメージ)/(C)PIXTA

 信楽焼のタヌキの置物があると、大きくダラリと垂れた“タマ袋”につい目が行ってしまいます。お金が貯まる金運を表しているようですが、あまり格好がいい姿とはいえません。

 しかし、人間にもタマ袋(陰嚢=いんのう)が大きく腫れて見える「陰嚢水腫」という病気があります。炎症を起こして腫れているわけではありませんので、痛みもなく、命に関わることもありません。タマ袋の中に何がたまって大きくなるかといえば、「腹水」と呼ばれる水(体液)です。

 特に乳幼児によく見られる病気ですが、大人になってから発症する場合もあります。乳幼児に見られるのは、先天的(生まれつき)に起こるタイプの陰嚢水腫です。

 男性の睾丸(こうがん=精巣)は、胎児の頃はおなかの辺りで形成されます。それが下降して腹膜の一部とくっついて、徐々に股の付け根の方に移動していき、陰嚢の中に納まります。正常なら睾丸によって引っ張られた腹膜は突起状になって閉じますが、それが閉じずに交通路が残ってしまうと腹水が流れ込んで陰嚢にたまるのです。これを「交通性陰嚢水腫」と呼びます。

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尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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