人生100年時代の歩き方

持病に糖尿病やがん…新型肺炎からどうやって身を守るべき

武漢の病院では厳戒態勢で治療に
武漢の病院では厳戒態勢で治療に(C)共同通信社

 新型コロナウイルスによる肺炎の感染者が日ごとに増えている。厄介なのは、無症状での発症例が少なくないこと。中国・武漢からチャーター便3便で帰国した565人のうち感染者は8人で、5人は無症状だった。今後は、感染しても無症状の人が、ウイルスをまき散らす恐れは十分。どうやって身を守ればいいのか――。

 危機的な状況が迫る中、厚労省は先月31日、3次感染の可能性を指摘している。3次感染が疑われているのは、千葉に住む20代の外国籍女性バスガイドだ。先月18~22日に中国・大連からのツアー客を乗せていた。そのバスを運転していたのが、28日に新型コロナの感染が確認された奈良に住む男性だった。

 男性は、武漢からの客を乗せて、大阪―東京間を往復。バス内で感染したとみられる。女性には少なくとも2週間前は海外への渡航歴がなく、武漢からの訪日客との接触もないことから、男性運転手からツアー中に感染したようで、20日ごろから咳や鼻水が出ていたという。

 武漢の感染者が1次感染とすると、男性運転手が2次感染で、男性から感染した女性が3次感染となる。無症状の感染例といい、人から人への感染のしやすさといい、感染力アップを印象づける報告が相次ぐだけに、心配だろう。

 武漢の研究グループは先月1日~20日に入院した99人を調査。29日付英医学誌「ランセット」電子版に掲載された報告によると、年齢は21~82歳で、平均年齢は55歳。糖尿病や高血圧、脳卒中、心臓病などの持病がある人が、半数の50人だった。

 中国で重症化した人に関係していた病気のひとつが糖尿病だ。糖尿病の人は、どんな点に気をつければいいのか。糖尿病専門医で、「加藤内科クリニック」(東京・葛飾)の加藤光敏院長が言う。

「過去1~2カ月の血糖状態を反映するHbA1c(正常値は5・8%未満)が8%以上の方は、免疫力が低く、細菌やウイルスなどに感染すると重症化する可能性があり要注意。特に9%以上の方や高齢の糖尿病患者は、危険性が高いので、少しでも血糖値を下げる努力が必要です」

 HbA1cは5・8%未満が正常でも、糖尿病の人がそこまで下げるのは難しい。治療の現場では、まず6・5%を下回るように頑張るのが一般的だ。8~9%の人も、毎日の生活を改善しながら、薬をきちんと服用して血糖値を少しずつ下げるのが肝心だろう。

血糖自己測定しながら少しずつ下げる
血糖自己測定しながら少しずつ下げる(C)日刊ゲンダイ
がん患者で要注意は骨髄機能

 感染症予防というと、持病でがんがある人も厄介だ。がんは、免疫細胞の働きを抑えるため、免疫力が下がりやすいうえ、がんの治療でさらに低下しかねない。そういえば中国での1人目の死亡者は、がんと肝臓病を抱えていた。東大医学部付属病院放射線科の中川恵一准教授が言う。

「抗がん剤治療の後は、骨髄機能が低下し、細菌やウイルスから身を守る働きがある白血球が減ることがあります。抗がん剤治療後は、特に要注意ですが、そうでなくても、新型コロナウイルスが問題視される今は、主治医に骨髄機能の状態を確認しておき、指示を受けるとよいでしょう」

 一般的には外出を控える、生ものの食事は避ける、手洗いをすることが大切だという。

「手指の衛生は、感染予防対策の中で最も重要です。がん患者も、そうでなくても、カバンにアルコール入りの手指消毒剤を入れておくことをお勧めします」(中川氏)

 現在、世界中の研究者がワクチンや特効薬の開発を急いでいる。既存の抗ウイルス薬が応用できないか調べる研究も同時進行で、抗エイズウイルス薬が重症者の容体を劇的に改善したという報告がある。本格的な治療法が見つかるまでは、持病の管理と手指の消毒をしっかりやろう。

関連記事