家に帰ってきたら、手を洗って、うがいをしなさい。
多くの人は、家庭や幼稚園などでそう言われただろう。新型肺炎対策でも、予防の基本は、これに尽きるという。東京都健康長寿医療センターの桑島巌顧問(循環器専門医)が言う。
「新型肺炎やインフルエンザなどが流行するときに手を洗うのは、手に付着したウイルスを洗い流すのが目的です。咳やくしゃみのしぶきとともに放出されたウイルスは、直接周りの人が吸い込むだけではありません。身の回りにあるものに付着します。デスクで仕事をしているときに咳をすれば、パソコンのキーボードや固定電話のプッシュボタン・受話器の持ち手などに付着する可能性が高い。電車の中なら、つり革や手すりです。不特定多数が利用するものはウイルスに汚染されている恐れがあります。そういうところに触れ、その手で目や鼻をこすったりすると、その粘膜から感染しやすいのです」
東大医学部付属病院放射線科の中川恵一准教授が、アルコール入りの手指消毒剤を外出時も持ち歩くべきというのは、外回り営業からオフィスに戻ったとき、外食で席に着いたときなどに手指をこまめに消毒するためだ。
「トイレの後、ペットや動物に触れた後、鼻をかんだりくしゃみを手で覆ったりした後なども、消毒するのが無難です」(中川氏)
ウイルスが感染するのは目や鼻、口などの粘膜だ。
「コンタクトレンズの使用者がレンズを交換するときは、必ず手指を消毒することです」(桑島氏)
粘膜から感染するということは、粘膜と粘膜が触れ合うセックスの前も要注意。浴室で2人で手指をしっかり洗い、アルコール消毒してから、ベッドインするといいだろう。
洗剤を泡立てたら、手のひらだけでなく、手首までよく洗う。アルコール入り消毒剤は、手指や手のひら、甲などをまんべんなく伸ばすのが効果的だという。
「感染症予防では、マスクも大切ですが、もっと重要なのは手指の消毒です」(桑島氏)
先人の知恵は、間違っていないのだ。