膝の軟骨を修復 「変形性膝関節症」を改善させる2つの体操

関節を温存するためには軽い運動がいい
関節を温存するためには軽い運動がいい(C)日刊ゲンダイ

「膝が痛くて階段がツライ」「膝がこわばる」。年とともに膝に悩む人が増えてくる。その原因の多くは変形性膝関節症だ。注射を打ったり、膝を支える太ももの筋肉を鍛える運動で、すり減った膝の軟骨の機能をカバーしようとするが、思うようにいかない。そんな中、お金もかからず、誰にでも簡単にできる体操で膝の軟骨を再生し、痛みを和らげる方法があるという。考案した整形外科専門医で「銀座医院」(東京・中央区)の齋藤吉由医長に話を聞いた。

「変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減り、関節が炎症を起こしたり、変形したりすることによって、痛みやしびれが起こる病気です。弾力性のある膝軟骨が、膝にかかる衝撃を吸収したり、関節の動きをスムーズにしてくれるおかげで体を自由に動かせるのですが、長年膝を酷使したり、過度の負担をかけ続けると、膝軟骨が劣化し、消耗してしまうのです」

 この病気は、ある日突然、立ち上がったり、階段を上り下りしたりすると、ズキンという痛みが膝に走るようになる。やがて痛みのほかに膝のこわばりを感じるようになり、膝の可動域が狭くなる。曲げ伸ばしがツラくなり、正座ができなくなる。症状が進むと、安静にしているのに膝が痛くなる。

「変形性膝関節症の患者数は40歳以上で約2500万人といわれ、そのうち800万人が治療を受けていて、薬物療法、運動療法などが行われます。最終的には手術となり、人工関節置換術などが必要となります」

 しかし、この手術には細菌感染などのリスクがある上、人工関節の耐久年数が約20年で、再置換手術が必要となるケースも多い。

「それを避けるには早くから関節を温存するための軽い運動が必要です。変形性膝関節症の場合、過度な運動はかえって関節に負担をかけてしまい、膝を悪くする場合がありますが、適度な運動は膝軟骨の修復や再生が期待できるのです」

 実際、大阪大学大学院グループの研究では、膝関節の軟骨細胞に軽い刺激を与えたところ、軟骨の修復や再生を促す物質が増加したことが報告されている。

■寝たまま膝揺らし・足バイバイ体操

 一方、負荷や刺激が大き過ぎると、こうした物質が減少したり、痛みの原因となる物質が増えたりすることが確認されている。

「軽い運動というと散歩をイメージする人も多いのですが、変形性膝関節症の患者さんは動くと膝が痛むため、歩くことすら嫌になる。結果、運動不足による体重増や筋力低下からさらなる膝負担となり、症状悪化の悪循環に陥りかねません。そこでお勧めなのが『寝たまま膝ゆらし』『足バイバイ体操』です」

「寝たまま膝ゆらし」は布団か床の上であおむけに寝て、膝に負担がかからないように膝の下に折り畳んだタオルを置く。あとはかかとを起点にして、膝を5センチ程度持ち上げて下ろす動作を小刻みに繰り返す。両側でも片側ずつでもよい。

「足バイバイ体操」は両手を後ろについて床に座るか、あおむけの状態で、かかとを起点に両足を内外にブラブラ揺らす。いずれも違和感や痛みが出たら中止し、治まったら再開する。連続して行う必要はなく断続的に行い、それぞれ1日合計1時間を目指す。

 実際に、変形性膝関節症を患う50代の女性は寝返りすら打てなかった膝の痛みが軽くなり、階段の昇降もラクになったという。軟骨の再生もMRI(磁気共鳴画像装置)でも確認された。

「軟骨の再生は数カ月~数年かかりますが、痛みの改善は早い人で数週間で実感できます。痛みが改善する理由は大きく2つあります。ひとつは、リズミカルな運動が幸せホルモンともいわれる神経伝達物質『セロトニン』を活性化し、『下行性疼痛抑制系』と呼ばれる痛みを抑える仕組みを強化するからです」

 また、体を小刻みに動かすと、骨格筋から慢性炎症を抑える「PGC―1α」も多く分泌される。

「年を取ると免疫系が老化して炎症反応を制御する機能が低下し、全身に慢性炎症が起こります。リズミカルな運動はこれを回復させる働きがあるのです」

 どちらの運動も恩師である故・井上明生久留米大学名誉教授の研究がヒントになっている。

「井上先生は2005年、ジグリング(俗にいう貧乏ゆすり)で股関節の軟骨が再生することを世界で初めて医学的根拠を用いて証明しました。ならば変形性膝関節症にも応用できるのではないか、と考えたのです」

 あなたもやってみてはどうだろうか。

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