進化する糖尿病治療法

仲間をつくったら運動嫌いの人が三日坊主に終わらずに済んだ

写真はイメージ
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 運動習慣を身に付けたいけど挫折してしまうという人は、家族や仲間と一緒にやると挫折しづらくなります。

 ある大手健康機器メーカーでは、心筋梗塞や脳卒中を減らすことをミッションとした事業を立ち上げるにあたって、社員の健康度を高めるための取り組みを始めました。

 そのひとつは、血圧測定の習慣化です。基本は朝晩自宅で、もし朝に自宅で血圧を測れなければ会社で測ってもいいということにし、きちんと測定した場合はポイントを付与。体重測定をした場合もポイントを付与。それらの合計が専用アプリにアップされ、その日ランダムに選ばれた社内の“対戦相手”と、合計点を競い合うというものです。

 この取り組みによって、「仮面高血圧」が発見でき、産業医を通じて個別にアプローチができたそうです。

 仮面高血圧とは、健康診断や診察室では正常なのに、自宅や職場などで測ると高血圧である場合をいいます。米コロンビア大学のトーマス・ピッカリング教授は、「仮面高血圧は一般的な高血圧よりも心筋梗塞、脳卒中のリスクを高める」と指摘。正常血圧の人のリスクを1とすると、一般的な高血圧は2・94倍、仮面高血圧はそれを上回る3・86倍という研究発表を行っています。

 また、「血圧測定と体重測定をポイント化し、“対戦相手”と競争」という要素によって参加者のモチベーションが上がり、参加率も向上したそうです。

 友人同士で集まって走るようになり、運動習慣が身に付いたという人もいます。たまたま、あるハーフマラソンの大会に出場した人が「走った後のビールがうまい」と言いだしたのをきっかけに、5~6人で土曜日に10キロ弱のジョギングをするようになったそうです。運動習慣がなかった40代後半の男性は、このグループが発足して半年後に共通の友人を介して参加。完全に「飲み」が目的で、走ることにはほとんど関心がなかったそうですが、ちょうど走り始めたのが桜が咲きだす季節で、満開の花の中を走るのが気持ちよかった。

 一方で、周囲が男性のペースに合わせてゆっくり走ってくれることが、申し訳なかった。そこで、友人たちと走らない日曜日や仕事が早く終わった平日にも走るようにしたところ、徐々に10キロ弱を走るのに慣れてきて、友人たちの本来のペースに合わせて走れるようになった。仕事は必ずしも頑張ったから良い結果を出せるというものではありませんが、ジョギングはやったことが結果に反映される。体重と体脂肪率が落ちていくのも励みになり、今では友人と一緒に走る日を含め、週3日のジョギングが習慣化しているとのこと。

 ご夫婦で何かを始めるのもいいですよ。Hさんご夫婦は、妻が最初にスポーツジムの体験会に参加しました。そのジムは、昨今人気の「暗闇フィットネス」。ミラーボールやムービングライトなどの演出を利用した、まるでクラブやライブハウスのような薄暗い空間で、大音量で音楽を聞きながらインストラクターの指導のもと、運動を行うというもの。これまでスポーツジムに入会しては“幽霊会員”となって退会する――を繰り返してきたHさんご夫婦。今までと違う内容に、妻は「これならできそう!」と思ったとか。

 夫の了解を得ずにいきなり夫婦2人分の申し込みをし、初日は夫を引っ張って参加。すると夫も好印象で、お互い誘い合ってジムに行くようになった。インストラクターがレッスンの間中、あおってくれるので楽しい。さらにインストラクターと親しくなると、家で2人でいる時も「インストラクターの○○さんがね」と話をするようになった。そうなると、よりジムが楽しくなり、通うようになる。最近では、トレーニングについての会話が日常的になされるそうです。翌日のジムを楽しむために、お酒好きのご夫婦ですが、やや控えめに飲むようになったといいます。

 仲間とやるのも、夫婦でやるのもちょっと……。こんな場合は、お金はかかりますが、パーソナルトレーナーの力を借りるのもいいと思います。マンツーマンでトレーニングの指導、栄養指導などをしてくれる人がパーソナルトレーナーになります。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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