血管・血液を知る

「好中球」予備軍は血管壁付近や骨髄のプールで待機中

風邪でも活躍(C)日刊ゲンダイ

 骨髄にも末梢血内の10~30倍もの量の滞留プールがあり、これら生体内のすべてを合わせると、実に数千億個という好中球が存在しているのです。寿命は血液内で1日弱、組織内で数日と短いのですが、細菌感染の防御などで死滅しても、貯留プール内の好中球の動員により末梢血内を流れる好中球数は速やかに増加します。

 好中球は感染だけでなく外傷、食事や運動、ストレスなどに対し、辺縁プールに滞留していた好中球が血管内に移動して防御態勢を取るのです。

 特に細菌の感染時には、マクロファージ(貪食細胞)から放出されるサイトカインなどの働きで炎症が起こり、炎症組織からの刺激で骨髄内での好中球が増産されて炎症巣に引き寄せられます。血液検査では、好中球は著増して1マイクロリットルあたり1万以上になることもあります。

 細菌感染を防御する好中球には、コロナやインフルエンザなどのウイルスに対する殺菌作用はないとされてきました。しかし、最近の研究では好中球も早期にウイルスに反応してウイルス性肺炎の病巣に集まり、感染の防御に関係する可能性があるといわれています。細菌(ブドウ球菌など)、コロナ感染重症例では、好中球は減少から増加までさまざまで、リンパ球の減少が見られます。

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東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。

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