「子供の肥満」親の対策は? 脂肪肝や高尿酸値の子供もいる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 1970年代から増加したのが子供の肥満だ。現在は落ち着いているものの、子供が肥満の場合、親は、どういう対策を取るべきか? 済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科の乾あやの部長に聞いた。

 子供が肥満かどうか。まずはそれを、親がしっかり認識しているだろうか? 子供の場合は一般的に「肥満度」で評価する。肥満度は、<(実測体重―標準体重)÷標準体重>×100で計算。標準体重は性別、年齢別、身長別に設定されているもの。

「肥満と肥満症は異なります。肥満は単に太っている状態。肥満症は肥満の合併症が予想されるか、脂肪肝や動脈硬化などが見られ、治療が必要な場合をいいます。東部病院では肥満症の場合、1週間入院してもらい、食事時間や食事内容などを徹底的に洗い出し、どういう対策ができるかを医師、栄養士、看護師、保育士、チャイルド・ライフ・スペシャリストらが参加してチームで考えます」(乾部長=以下同)

 成人では、肥満が病気のリスクを上げることがよく知られている。「肥満症、高血圧、高血糖、高中性脂肪血症のうち3~4つが該当すると心筋梗塞・狭心症の発症率が36倍高くなる」などで、1キロ減量すればLDL(悪玉)コレステロールが1㎎/デシリットル低下するともいわれている。子供の肥満も同じなのか?

「肥満症の子供に腹部エコーを行った経験では、脂肪肝は珍しくありません。これは、成人の深刻な脂肪肝である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と同様の病気ですが、成人と肝臓の組織の特徴は異なります」

 脂肪肝には、アルコールが主な原因のものと、肥満が原因のNAFLDがある。成人では、NAFLDは、アルコール性脂肪肝よりも肝炎、肝硬変、肝臓がんへと進むスピードが速いといわれているが、子供の脂肪肝は小児期には肝炎、肝硬変、肝臓がんと進んでいかない。

■できる方法を探すこと

 しかし、子供の肥満症と肥満を放置していいかというと、そうではない。

「頚動脈エコーで動脈硬化の子供を私は見たことがありませんが、睡眠時無呼吸症候群や高尿酸値、糖尿病、高血圧の子供はいます。身体的問題がない肥満であっても、それが改善されない場合、肥満になる生活環境や味覚が固定化されてしまい、成人以降も肥満で、結果的に生活習慣病のリスクが高くなります」

 研究で、はっきり証明されているわけではないものの、生活習慣病の発症年齢が20~30代と前倒しになる可能性もある。また、糖尿病は、網膜症、腎症、神経障害といった3大合併症のほか、認知症や胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、腎臓がんなど、がんのリスクを上げることが研究で明らかになっている。子供の肥満が若い年代での糖尿病発症を招き、それががん発症へとつながっていくかもしれない。

「子供の肥満の改善法は、大人と同様に食事と運動療法しかありません。しかし、家庭環境や経済状況によっては、『野菜が多めの和食中心で』『1日3食規則正しく』『睡眠の3時間前に食事を終わらせる』といったことが現実的に不可能なケースが少なくない。1週間の入院(前出)で、これならできるということを見いだし、親御さんらに提案しています」

 食事を作るのが得意ではない、あるいは食事を作る時間が取れないなどの場合は無理せずに、不足している食材や食品をコンビニやスーパーなどで購入したり、作り置きを活用するなど継続することが重要だ。

 なお、親が肥満の場合は子供も肥満になりやすい。遺伝的要因もあるが、食生活の影響も大きい。家族一丸となって減量に取り組む必要がある。

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