新型コロナでマスクが手に入らない…必須の花粉症「薬」対策

まだまだマスクは入手困難
まだまだマスクは入手困難(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルスの影響で、薬局やドラッグストアの店頭からマスクが消えた。国内のウイルス感染者の報告が相次ぎ、不安が高まる。一方で花粉の飛散が始まり、花粉症対策も心配だ。どうすればいいのか?

 マスクでの花粉防御が十分にできないとなると、頼れるのは薬。「適切な薬を選べば、日常生活に支障がないレベルまで症状を軽減できる」と言うのは、花粉症治療の第一人者である日本医科大学大学院教授の大久保公裕医師(耳鼻咽喉科専門医)。

「ただし、“適切な薬選び”が非常に難しい。『薬が効かない』と私の外来を受診する患者さんのほとんどは、合っていない薬を飲んでいます」(大久保医師=以下同)

 花粉症の飲み薬は大きく分けて「クシャミと鼻水に効く薬」「鼻詰まりに効く薬」「クシャミ・鼻水・鼻詰まりに効く薬」「全般的に効く薬」の4タイプに分かれる。

 たとえば第2世代抗ヒスタミン薬(以下、抗ヒスタミン薬)はクシャミと鼻水に効き、鼻詰まりに効く薬となると抗ロイコトリエン薬になる。それぞれ効果が表れるまでの時間が異なり、抗ヒスタミン薬は比較的早く効くが、抗ロイコトリエン薬は効果が出るまで1~2週間かかる。

「花粉症の薬を選ぶには、どんな症状があるかに加えて、どういうときにどういう症状が出て、何をつらいと感じるかを患者さんから聞き、それに合った薬を、ちょうどいいタイミングで処方することが必要です。花粉症治療に詳しい耳鼻咽喉科でないと難しい」

 しかし、一般的にクリニックを受診すると、処方されるのは抗ヒスタミン薬。「鼻詰まりが最もつらい」といった人では「効果がイマイチ」と感じるだろう。また、医師ですら専門外となると適切な薬の選別が難しいのだから、素人が市販薬で花粉症の症状を抑えようとするのは、軽症患者を除いて、無理がある。

■重症でも症状は抑えられる

 以上のことを踏まえた上で薬選びをするとして、今シーズンならではのトピックスは「貼り薬」と「重症患者にも効く薬」の2つだ。

 まず貼り薬は、2018年4月に発売された「アレサガテープ(一般名エメダスチンフマル酸塩貼付剤)」。世界で初めての貼るタイプの抗ヒスタミン薬で、「食後」「食前」などの決まりがないため、一日のうちいつ貼ってもよく、1回貼れば効果が24時間続く。

「花粉の飛散が増える時間帯に薬の効果が薄れることもありません。朝、症状がつらい人は、前日の夜から貼って備えることもできる。眠気などの副作用も少ない。使い勝手のよい薬なのですが、医師から患者さんに“飲み薬か、貼り薬か”と提案することが少なく、あまり知られていません」

 次に「重症患者にも効く薬」とは、昨年末に承認された「ゾレア(一般名オマリズマブ)」。アレルギー反応に関係するIgE抗体の働きを直接阻害するという、従来薬とは異なる作用機序を持つ。従来薬では症状を抑えられなかった重症患者に処方される薬だ。2~4週間に1回の皮下注射になる。

「抗ヒスタミン薬などを併用する薬ですが、従来の薬をほぼやめられるほどの効果があります。眠気の副作用もあまりない。ただし、ゾレアの使用が認められるのはいくつかの条件を満たした場合で、皮下注射を行える施設も限られています。高額な薬でもある」

 ゾレア使用の条件のひとつに「鼻噴霧用ステロイド薬とケミカルメディエーター受容体拮抗薬の治療を受けたが、コントロール不十分な鼻症状が1週間以上持続」があり、また、皮下注射を打ってから効果が出るまで1週間ほどかかるので、関心がある人は早めに耳鼻咽喉科医に相談しておいた方がいいだろう。

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