独白 愉快な“病人”たち

“全身がん”の高須克弥さん「長生きすればみんながんになる」

高須克弥さん(C)日刊ゲンダイ

 大して驚きませんでした。「おう、来たか」といったところです。人間は長生きすれば、みんながんになる。学生時代の解剖実習の時、教授から「人間は次第に細胞が死滅していくけれど、がん細胞は生き続けるから、長生きの最後はがんだけが残る」と教えられました。確かに、枯れ木のようになった老人の検体からは複数のがんが確認できました。逆にハツカネズミはがんにならないんです。がんになる前に寿命がくるからです。

 人間は長生きになったから、がんになるのは当たり前なのです。だからイボができれば取るし、歯が抜ければ差し歯もするように、がんを見つけたら取るだけです。“メンテナンス”の一環と考えています。なので、がんが見つかってすぐに開腹手術を受けて、尿管と膀胱半分と左側の腎臓は取ってしまいました。

 その時、万全を期すなら膀胱は全部取った方がよかったのですが、僕は「半分残せ」と指示をしました。なぜなら、膀胱を全部取ってしまったら人工膀胱になるでしょう? あれはなかなかケアが大変なので、自分が執刀する手術に支障を来すと思ったんです。がんは残しても仕事ができたほうがいい。それは僕にとっての「QOL」(クオリティー・オブ・ライフ)を優先した結果です。実際、入院している時に病院を脱走して手術していました。手首に患者のタグをつけたままね。

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