遺伝子治療薬はここまで来ている

新型コロナ検査で使われるPCRはDNAを増幅させる偉大な技術

乗船者のものとみられるスーツケースを運ぶ関係者
乗船者のものとみられるスーツケースを運ぶ関係者(C)共同通信社

 新型コロナウイルス騒動は、終息するどころか患者数がうなぎ上りに増えているようです。連日の報道でよく目にする「PCR検査」ですが、詳しい検査の内容は報じられていません。

 PCR検査に用いられているPCR(Polymerase Chain Reaction=ポリメラーゼ連鎖反応)は「遺伝子」と関連の深い実験技術です。1980年代にこのPCR技術が開発されたことによって遺伝子研究が進んできたといっても過言ではないほど、生化学研究の中で最も偉大な技術のひとつといえます。

 PCRは、遺伝子のもとになっているDNAを増幅させる技術です。PCR反応用の試薬と、増やしたいDNAを混ぜて反応させます。そのステップはいたってシンプルで、「加熱して冷ます」を繰り返すだけです。

 とはいえ、試薬の発見、急速に温めて急速に冷やす技術の開発、全自動の機械の開発、温度条件の最適化、DNAが増えたかどうか確認する方法の確立……といったさまざまな技術革新があって完成されました。

「加熱―冷却」を1回行うと、DNAは2倍に増えます。となると、この工程を11回経ると1つのDNAが1024倍に増えるということになります。このようにDNAを増幅できるようになったことで、それまでは検出が難しかった微量なウイルスでも検出することができるようになったのです。また、PCR法を応用して「微妙なDNAの違い」も検出することができるようになりました。これによって、たとえばコロナウイルスの従来型と新型の微細な変化を検出して区別できるようになったのです。

 インフルエンザのように、コロナウイルスでもこのPCR検出技術がキット化され、迅速に検査ができるようになることを祈るばかりです。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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