医者も知らない医学の新常識

スマホアプリを検証 「AI」でがんをどこまで診断できるのか

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 AI(人工知能)が人間の仕事に取って代わるというのは、昔はSFでしたが、今では現実の話です。多くの仕事で人間に出来る仕事は、AIにも出来る世の中になっているのです。

 医療の世界も例外ではありません。がんの診断は今はまだ医師の仕事ですが、そこにもAIが進出してきています。中でも皮膚がんの診断には、スマホで利用できるAIの技術を活用したアプリが、何種類も開発されているのです。皮膚がんの診断というのは、目で見た所見が重要で、これまでは経験のある専門医の独壇場でした。しかし、その技術をそのままプログラムしたAIのアプリが、その牙城を揺るがしているのです。

 ある研究ではスマホのアプリの方が、より高い確率でがんを診断した、という結果も報告されています。もう専門医の出番はないのでしょうか?

 今年の「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」という一流の医学誌に、これまでの6種類の皮膚がん診断アプリの性能を検証した論文が掲載されています。これまでの臨床データをまとめて解析したところ、意外にもAIの診断能力は当てになるものではなく、特に本当の良性の病変と悪性の疑いのある病変とを区別する力は、人間よりはるかに劣っていました。今後はどうか分かりませんが、今のところがんの診断はまだ人間の方に一日の長があるようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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