緊急企画 新型コロナを正しく恐れる

マスクは感染リスクを高める恐れ「子どもには厳禁」と医師

他人からうつる予防効果は書かれていない
他人からうつる予防効果は書かれていない(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルスの感染が急拡大している中国・韓国・日本では当たり前のマスク姿。マスクは感染者やその疑いのある人が周囲にうつさないために必要だが、感染していない人が感染するのを防ぐ予防効果はあるのか?

 新型コロナは、インフルエンザと同じウイルスの上気道感染の疾患だ。厚労省の「インフルエンザ総合対策」には「咳・くしゃみが出る時は、他の人にうつさないためにマスクを着用しましょう」とはあるが、他人からうつるのを防ぐ予防効果は書かれていない。

 2011年までの3年間に行われた英国の調査でも、「インフルエンザにおいてマスク着用だけの予防効果はほとんどない」との結論が出ている。同様な結果は日本でも確認されており、世界保健機関(WHO)の感染予防マニュアルには「マスクによる上気道感染の予防効果にはハッキリしたエビデンスがない」と書かれている。 

「予防効果どころか、新型コロナウイルスに感染していない人が感染しないためのマスクはマイナスで、かえって感染リスクを高める恐れがある」と警告するのは、長く地域医療と公衆衛生に携わってきた岩室紳也医師だ。

「中国保健当局は飛沫より小さな粒子によるエアロゾル感染の可能性に言及していますが、それはかなり特殊な状況といえます。新型コロナウイルスでハッキリしているのはインフルエンザと同じ飛沫感染と接触感染で起きるということです」

 マスクは飛沫に含まれるウイルスが直接口の中に飛び込んだり、ウイルスが付着した手で口を触ったりすることを防ぐと思っていないだろうか。

「しかし、ウイルス感染で一番危険なのはマスクに頻繁に触れることでマスクの表面にウイルスが付着し、それをマスク越しに吸い込んでしまうことなのです」

 だからこそ、マスクの表面を絶対に触ってはいけないと医師は言うのだが、無意識に触ってしまう人が多い。

「とくに子どもはいろんなものを触るし、その手で何度もマスクの表面を触って感染リスクを高めます。ですから子どもの感染予防のためのマスクは厳禁だと私は考えています」

“網目の細かいN95マスクならいいのではないか”と考える人もいるかもしれない。しかし、きちんと隙間なく装着すれば20分もすれば息苦しくなる。

「手術用マスクも、手術する人の唾が患者の体内に入らないようにするのが目的であって、医師らを守るためのものではありません」

 ただし、花粉症予防のためにマスクをする意味はあるという。通常のマスクの網目は10マイクロメートル程度。直径0・1マイクロメートルの新型コロナウイルスには役立たないが、直径30~40マイクロメートルのスギ花粉には効果が期待できるからだ。

「花粉症の人にこそ、新型コロナウイルスの感染を防ぐためにもマスクの表面を触らないことを意識すべきでしょう」

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