そうした成分も含め、生体のりは低コストなうえ、下地を選ばずに細胞の生着率を高めたり、分布の偏りを解決する要素があるため、医療材料として見直されています。今回のスプレー法でも、生体と親和性がある既存医薬品の生体のりを混ぜることにより、心臓の表面に20~30秒ほど吹きかけるだけで、幹細胞が偏りなくしっかり生着する確率が高くなると考えられます。
幹細胞を利用した新しい再生医療が、高度な施設や複雑な準備も必要なく、低コストで簡単に実施できるとなれば、一般に広まるのは間違いありません。広く普及すればそれだけコストも下がるので、さらに実施する施設が増えるという好循環が生まれます。
ただ、スプレー法は臨床試験が始まったばかりなので、まだ様子を見る必要があります。現時点では、20~80歳の3人の重症心不全の患者さんに実施され、これから2年かけて安全性と有効性が確認されます。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」