緊急企画 新型コロナを正しく恐れる

予防には徹底した手洗い アルコール消毒だけは効果限定的

手の甲や指の間もまんべんなく
手の甲や指の間もまんべんなく

 個人がいまできる最大の予防策といえば「徹底した手洗い」と「エタノール(アルコール)消毒」だろう。

 この2つは、どちらを優先すべきなのか? 「弘邦医院」(東京・葛西)の林雅之院長に聞いた。

「断然、手洗いです。ノロウイルスに関する手洗い時間と回数による効果を調べた研究が、2006年に感染症学雑誌に発表されています。それによると、手洗いなしでの残存ウイルス数100万個に対して、ハンドソープで10秒の揉み洗い後に流水15秒のすすぎを2回繰り返すと、数個に減ることが報告されています」

 残存率はなんと0・0001%以下。ハンドソープを使った手洗いは、単にウイルスを石鹸で絡め取って物理的に洗い流すだけだから、手にも優しい。しかもウイルスは、ノロだろうが新型コロナだろうが同じ効果が期待できる。

 一方、病院などの医療機関などに置いてある手指消毒用のエタノールはウイルスの種類によってその効果が違う。

「インフルエンザのように脂溶性の殻(エンベロープ)をもつウイルスに対しては消毒用のエタノールは効果があります。脂溶性の殻を壊して感染が拡大するのを防ぐ働きがあるからです。ところが、ノロウイルスなどのようにエンベロープがなければ消毒用エタノールは効きません」

 幸い、新型コロナは消毒用のエタノールが効果を発揮するタイプのウイルスだが、アルコール手指消毒剤による消毒を行うには、砂やホコリ、油汚れなど目に見える汚れを洗い流しておかなければ最大限の除菌効果を得ることはできない。手を洗わずにアルコール消毒だけで済まそうとしても効果は限定的ということだ。

「医師が診察の合間にアルコール消毒だけで済ませるのを見て、自分もそれで十分と考える人がいますが間違いです。私たちは診察室に入る前にはきちんと石鹸で手洗いしてウイルスの数を減らしたうえで、残ったウイルスをエタノール消毒しているのです」

 具体的には、石鹸と流水洗いで汚れを取り、乾いたタオルでよく水気をふき取ったあとに、手指全体にエタノール手指消毒剤をムラなくいきわたらせて、まんべんなくすり込むようにする。

「もちろん、手のひらだけでなく手の甲や指の間にもまんべんなくすり込むことが必要です」

 いまは消毒用のエタノールが品薄になりちょっとした騒ぎになっているが、それを嘆く必要はないということだ。

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