ようこそ!不老不死レストランへ

アンチョビーは脳や血管の老化防止に 塩分には気をつけて

アンチョビーガーリックバターバゲットとジャガイモとタコの炒め物(左)
アンチョビーガーリックバターバゲットとジャガイモとタコの炒め物(左)/(C)日刊ゲンダイ
保存食材(4)アンチョビー

 アンチョビーは小ぶりのカタクチイワシを塩漬けにして発酵させ、オリーブオイルに漬けたイタリア発祥の保存食材です。

 発酵食品ならではの香りとコク、うま味がありますけれども、なにしろ塩辛い。なので、そのまま食べるのは不向き。ピザやパスタ、あるいは他の食材とまぜたり、調味料として使ったりするケースが圧倒的です。

 アンチョビーには脳の老化を防ぐDHA(ドコサヘキサエン酸)、血管を老けさせにくくするEPA(エイコサペンタエン酸)、カルシウムの吸収を助けるビタミンD、新陳代謝を促進するビタミンB2などが豊富に含まれています。

 塩漬けにして水分が抜けている分、同量の生のカタクチイワシと比べてタンパク質なども豊富です。

 ただし、調理に使うアンチョビーの量には気を付ける必要があります。ただでさえアンチョビーは塩分が多いうえ、メーカーによって塩分濃度が異なるからです。レシピに目安となる量は書きましたが、塩分を減らすことが不老不死レストランの大きなテーマですし、必ず味見をしながら調理してください。少量でもアンチョビー独自の風味とうま味は十分、味わえますから。

 今回はジャガイモとタコの炒め物の他に、ガーリックバターと合わせてバゲットと召し上がっていただきます。アンチョビーは中でもパンやパスタなどの炭水化物と好相性です。

■ジャガイモとタコの炒め物

《材料》 
◎メークイン 300グラム(塩を入れてゆでてから皮をむき、一口大に)
◎オリーブオイル  大さじ2
◎ニンニクみじん切り  小さじ1
◎アンチョビーみじん切り  大さじ1と2分の1(写真)
◎ゆでタコ 170グラムを一口大に
◎白ワイン  大さじ2
◎塩、白胡椒  少々
◎イタリアンパセリ  粗みじん切りを適宜

《作り方》 
 フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れて中火で炒め、アンチョビーを加えてさっと合わせる。ジャガイモを加えてフライパンに広げ、少し焼き色をつけるように焼いたら、タコを入れて炒め、白ワインを加える。味をみて塩、白胡椒で調え、器に盛り、イタリアンパセリをあしらう。
アンチョビーガーリックバター バゲットと
 アンチョビーのみじん切り大さじ1と発酵バター大さじ4をよくまぜる。バゲットに塗り、細かい霧をバゲットの皮に吹いたら、オーブンでかりっと焼く。

▽松田美智子(まつだ・みちこ)女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事 」「調味料の効能と料理法」など。

アンチョビーのみじん切り
アンチョビーのみじん切り(C)日刊ゲンダイ
アミノ酸のうま味が開いた発酵食品でウイルス性の風邪予防

 アンチョビーとは、小魚を三枚におろし、塩漬けにして冷暗所で熟成させたもの。つまり発酵食品であり、保存食品でもある。バスク地方などスペイン北部のバルではピンチョスとして定番の前菜となる。

 オイルサーディンもイワシの加工食品だが、これはアンチョビーよりも大きめのイワシの頭と内臓を取ってそのまま油漬けして缶詰め加熱したもの。つまりオイルサーディンも保存食品ではあるが、発酵食品ではない。どちらもそれなりに酒の肴に最適だが、今日は塩味がよく効いたアンチョビーの方をいただこう。

 発酵させている分、アミノ酸のうま味が開いて味わい深くなっている。いわゆる青魚なのでDHAやEPAといった必須脂肪酸もたっぷり含まれる。これらの成分は免疫系の賦活化にも重要なので、ウイルス性の風邪がはやっている今の季節、しっかり補給しておきたい。

 アンチョビーに使われるのは、イワシの仲間のうちカタクチイワシ。他にマイワシ、ウルメイワシがいる。魚ヘンに弱いと書いてイワシだが、イワシは魚としてはとても優れており、地球の生命系においてとても重要な地位を占めている。太陽の光を海中の植物性プランクトンが光合成によって栄養分に変える。それを動物性のプランクトンが食べる。次に位置するのがイワシたちだ。群泳しながら巨大な水産資源を形成する。それがより大きな魚や鳥、アシカやクジラなどの数多くの海洋生物の糧となる。その一部を我々ヒトも分けてもらっているのである。

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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