新型コロナPCR検査結果のバラつきは検体の取り方にあった

中国では9回目の検査で陽性が現れた女性患者も(PCR検査の様子=中国、武漢市)
中国では9回目の検査で陽性が現れた女性患者も(PCR検査の様子=中国、武漢市) (C)新華社/共同通信イメージズ 

 先月、新型コロナウイルスの感染が確認され、2月1日に退院していた大阪市の40代女性ガイドから、再びPCR検査で陽性反応が出た。26日に大阪府が発表した。

 女性は1日の退院時、当時はPCR検査が義務付けられていなかったので受けていなかった。自宅で静養していたが、6日に咳の症状があり、同日のPCR検査で陰性。13日には症状が消えたものの、19日からまた喉の違和感と胸の痛みが続き、26日に検査で陽性が判明した。

 この女性がどうして陽性から陰性、陰性から陽性になったかはまだはっきり分かっていないが、こういう例はこの女性に限ったことではない。

 中国四川省の50代女性は、8回のPCR検査でいずれも陰性。しかし9回目の検査で感染が確認された。

 その50代女性は勤務先の同僚が感染したため、2月2~6日まで5日間隔離。その間は無症状だった。

 呼吸器官に症状が現れたのは、2月7日。7日、8日、11日にPCR検査をしたがいずれも陰性だった。12日のCT検査で肺に影が認められたので13日にPCR検査をしたが、これも陰性。17~22日の間に4回PCR検査をしたが、やはりいずれも陰性だったという。

 ところが、隔離から23日経った2月24日、9回目のPCR検査で陽性に。ちなみにこの女性、PCR検査で陰性反応が続いていた2月15日、血清検査では新型コロナウイルス陽性という結果が出ていたと、地元新聞が報じている。

 また、中国四川省では、新型コロナウイルスに感染後、陰性となりいったん退院し、その後の再検査では陽性になったという別のケースもある。同省の新型肺炎対策チームは「検体の取り方の問題の可能性が高い」としている。

 日本感染症学会は、新型コロナはインフルエンザに比べてウイルス量が少なく、PCR検査結果の判定を難しくしており、早い段階でのPCR検査は「決して万能ではない」と述べている。

 一方、国立病院機構東京医療センター耳鼻咽喉科の角田晃一医師は、一般論として「検体の取り方が検査する医療者によって違うと、陽性であっても陰性という結果が出ることがある」と指摘する。

 PCR検査は、綿棒で患者の咽頭などをぬぐって検体を取り、それを使って陽性か陰性かを調べるが、「正確に調べるには、上咽頭まで綿棒を到達させなければなりません。しかし、医療関係者向けにYouTubeなどで紹介している検体の取り方が、紹介元によって違います。世界で最も権威のある医学雑誌『ニューイングランドジャーナルオブメディスン』(NEJM)が発信するYouTubeの紹介は非常に信頼の置けるものですが、違う紹介元では、上咽頭まで到達できていない。これでは正しく検体を取れない。患者さんが痛がるからだろうと、上咽頭よりもっと手前で検体を取っている医師もいるかもしれません」(角田医師)。

 つまり「陰性」と出ても安心はできないということか。そもそも日本では、検査を受けたくても受けられない“検査難民”が続出していることも深刻な問題ではあるが……。

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