杉浦太陽は2個をすぐ…大腸ポリープ切除見極めのポイント

良性のものも悪性のものもある
良性のものも悪性のものもある(C)日刊ゲンダイ

 今年1月末、俳優の杉浦太陽(38)が大腸ポリープを切除したことを自身のブログで報告した。健康診断で内視鏡検査を受けたところ大腸ポリープが2個見つかり、その場で切除手術を受けたという。

 同じように健診で大腸ポリープが見つかったが、そのまま経過観察中だという中高年は多いだろう。切除したほうがいいタイミングや見極めのポイントはどこにあるのか? 日本消化器病学会専門医で、これまで7万件以上の内視鏡検査を行ってきた江田証氏(江田クリニック院長)に詳しく聞いた。

「ポリープ」とは瘤ないしキノコ状に盛り上がったものの総称で、良性のものも悪性のものもある。そのため、見つけたらすべて即切除しなければならないわけではなく、主に「将来的にがん化する可能性が高いかどうか」が判断の基準になっている。

■大きさと見た目に問題なしなら経過観察が一般的

 大腸ポリープは大きく2種類ある。①「腺腫性ポリープ」(アデノーマ)は大腸ポリープの80%を占め、良性でも大きくなるとがん化する可能性がある。一方の②「過形成性ポリープ」(化生性ポリープ)はがん化するケースはまれで、明らかに形がいびつだったり、悪性化する可能性が高い大腸の右側にある場合を除いては、基本的に経過観察される。

 がん化するリスクがある腺腫性ポリープのうち、切除するかどうかの一番の目安は「大きさ」だという。

「大腸ポリープ診療ガイドラインでは、ポリープの直径が6ミリ以上の病変を内視鏡による切除の適応としています。5ミリ以下のポリープに比べ、6ミリ以上の大きさになるとがんのリスクが7・2~14・6倍という英国のデータがあるのです」

 大腸がんが発生する経路は2つある。ひとつは正常な粘膜が発がん刺激を受けて直接がんが発生する「デノボ経路」でポリープは関わっていない。もうひとつが良性のポリープががんに変化する経路で、「アデノーマ・カルチノーマ・シークエンス」と呼ばれている。

「大腸ポリープは、がん抑制遺伝子のAPC遺伝子が異常を来すことで発生します。できたポリープは、がん遺伝子であるK―RAS遺伝子の変化によって大きくなっていき、さらにがん抑制遺伝子のp53遺伝子の異常によってがん化します。つまり、ポリープは大きくなるにつれ多段階的に遺伝子の傷が蓄積していきがん化するので、大きさが重要なポイントになるのです」

 大きさだけではなく、「見た目」で切除が検討されるケースもある。腫瘍の表面に見られる「ピットパターン」という模様で見極めるという。

「ピットパターンは6つの型に分類されていて、構造が不均一だったり、形がいびつだったり、模様が特殊な場合などは、大きさが5ミリ以下でも切除が検討されるケースがあります。診断には拡大内視鏡が使われ、色素内視鏡を併用して綿密に観察します」

 ポリープの大きさと見た目に問題がなければ経過観察になるのが一般的で、多くの人はこれに該当しているのだ。

 米国では、小さくてもポリープをすべて切除して病変が一切ない大腸=「クリーンコロン」を目指すことで76~90%の大腸がん抑制効果があるとしている。しかし日本では、5ミリ以下の大腸ポリープを切除すべきか経過観察でよいのか、学会でも依然として合意が得られていない。5ミリ以下のポリープまですべて切除するのは手術リスクと医療経済上の負担から、過剰な医療行為につながる可能性も指摘している。

「以前は電気メスを使ってポリープを切除する方法が主流で、出血や穿孔のリスクがありました。いまでは5ミリ以下のポリープは『コールドスネア・ポリペクトミー』という通電させない切除方法が広まりつつあります。ただ、すべてのポリープを即切除するかどうかは、内視鏡検査自体の難易度や負担、患者さんの希望、合併症のリスク、医療経済的な側面を総合的に考慮して判断されているのが一般的です」

 いずれにせよ、ポリープの大きさや見た目は自分ではわからない。ポリープとは関係なく直接がんが発生するデノボ経路もあるので、最低でも3年に1回は大腸内視鏡検査を受けた方がいい。

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