医療情報の正しい読み方

ランダム化に加えてプラセボを使った「盲検化」も重要

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 治療の効果を科学的に評価するためには、試験管内の実験や人以外の動物での実験では不十分で、人間で何が起こるか観察するだけでも十分でなく、人間での「実験」が必要です。さらに治療するグループとしないグループをでたらめに分けるランダム化が重要、というところまで説明してきました。

 今回はそれに加えて、盲検化について説明しましょう。

 いくらランダムに割り付けても、この人は薬を飲んでいる、この人は薬を飲んでいない、ということがわかっていると、治療効果判定への影響が避けられません。意識しないでいるつもりでも、薬を飲んでいるとわかっているとその効果を見つけようとしがちですし、飲んでいないとわかっていると、初めから効果なんかないからと見落としがちになる可能性があります。

 さらには不正をしようと思えば、同じような患者でも、薬を飲んでいる人は治ったと判定し、飲んでいない人は治っていないと判定するというようなインチキも可能になります。

 そうした不正を避けるために、薬を飲まないグループの人にも、見た目が本当の薬と区別がつかないような偽薬を飲ませ、医者にも患者にも本当の薬を飲んでいるかどうかわからないように研究するという方法がとられます。

 この見た目が同じで薬の成分が入っていない薬をプラセボと呼び、どちらの治療が行われているかわからなくすることを、マスキング、ブラインディングとも言います。

 治療効果を確かめるための「人体実験」は、ランダム化で交絡因子を排除し、プラセボによるマスキングで効果の判定がゆがめられないようにして行う必要があるのです。

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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