新型コロナウイルスの感染が世界的に広がる中、アメリカではある地方病院が熱い視線を浴びています。中西部ネブラスカ州オマハにある「ネブラスカ大学メディカルセンター」です。
米国立衛生研究所はこのセンターと協力し、エボラ治療薬として開発された抗ウイルス薬「レムデシベル」を使い、大規模な治験を行うと発表。実はアメリカでの初期の感染者やダイヤモンド・プリンセス号の乗客など、13人のアメリカ人を受け入れたのもこの病院でした。
なぜならネブラスカ大学メディカルセンターには、アメリカでもごく少数の病院しか備えていない生物学的封じ込め施設があるからです。1億円以上を投じて造られた封じ込めユニットには10人の入院患者を収容可能。病室以外にはウイルスを飛散させない空気交換装置バイオポッド、人的接触をできるだけ減らすためのコミュニケーションシステムなど最高レベルの安全設備を完備しています。
このユニットが造られたきっかけは、2001年に起こった9・11アメリカ同時多発テロでした。その直後に炭疽(たんそ)菌入りの手紙が上院議員に送られるなど、生物兵器テロへの懸念が広がったため、ネブラスカ大学メディカルセンターでは、生物兵器テロをはじめ感染病を専門に治療する施設の建設と研究に踏み切ったのです。
病院の空きスペースを改造して造った封じ込めユニットは、当初は何年もの間、使われることがなかったといいます。状況が変わったのが14年、アフリカでエボラ患者が大量発生した時です。エボラに感染して帰国したアメリカ人を受け入れた施設として一躍知られるようになりました。
病院の敷地内には国内唯一の国立の検疫施設もあり、ネブラスカ大学メディカルセンターは新型コロナウイルス対策の最前線基地としてますます注目されそうです。
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