独白 愉快な“病人”たち

岸あさこさん 世界でもまれな乳がんで「終わった」と思った

岸あさこさん(C)日刊ゲンダイ

 思えば留学前後を含めた4年間は乳がん検診をしていませんでした。それまでは2年に1度ぐらいのペースでエコー検査はしていたんですけれど……。留学直前にも一通りは検査したのですが、なぜか乳腺系だけしていなかったことが悔やまれました。

 そもそも私は、保険会社で審査部門の仕事をしていました。お客さまの病歴や症状、病院での検査結果などの情報を基に保険に加入できるかどうかを審査する仕事です。なので、知識としてはいろいろあったのですが、自分のことは見えていなかった。まさか自分ががんになるとはまったく思っていませんでした。食生活も気を付けていたし、たばこも吸わない。何より健康診断でずっと異常がなかったのです。「自分は大丈夫」と完全に過信していました。

 乳がん、しかも世界的にもまれなタイプで、「研究材料に使いたいので同意書にサインを」と言われたくらいの特殊ながん……。あまりにも突然のことでまったく受け止められず、しばらくは放心状態でした。どうしたらいいのかわからない強い不安と死への恐怖、そして「乳がんになった」と明かしたらみんなが自分を避けるのではないかという孤独、仕事は? 生活は? 将来は? と、どんどん自分を追い込んでいってしまいました。

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