血管・血液を知る

“流血”時に大活躍する「血小板」の機能と役割とは?

交通事故などでの“流血”時に大活躍
交通事故などでの“流血”時に大活躍(C)日刊ゲンダイ

 刃物などを使い思わぬ出血をすることがあります。このとき血を止めるために登場するのが「血小板」です。

 血小板は骨髄中の巨核球の細胞質が数千個にちぎれてできた細胞です。血液に細胞成分の重量比で約1%含まれ、赤血球96%、白血球3%に比べれば少ない。核を持たず、1個の大きさが2マイクロメートル(1マイクロ=1000分の1ミリ)で、正常な血液なら1マイクロリットルに15万~40万個が含まれています。

 血管が傷つくとまず傷口に血小板が集まり、くっつき合って(凝集)塊をつくります。これで傷口が詰まり、出血が塞がります。川が決壊して、急ぎ防波堤を築くようなものでしょうか。

 血管の内側は、血管内皮という一層の細胞で覆われています。この細胞は流れている血液を固まらせないように働いており、血栓(血の塊)ができるのを防ぎます。しかし、この血管内皮細胞が傷がついたり壊されたりすると、血小板は血管内皮細胞の外側を覆っているコラーゲン線維にくっつきます。

 これがフィブリノーゲン(血液凝固因子=血漿中に含まれる糖タンパク質の一種)を仲立ちにして血小板の働きを活発にして(活性化)、血小板同士の結合(凝集)を進めるのです。こうした血小板凝集が活性化してできた血栓によって、一次止血が成立します。

 しかし、止血はこれだけでは不十分です。そこで第二次機能が働きます。

 血液を固まらせるのに血液凝固因子という13個のタンパク質がありますが、傷口で、凝固因子のお互いの刺激で将棋倒しのように順番に活性化され、最後には第Ⅱ因子プロトロンビン(血液凝固の最終段階で働くタンパク質)が活性化されてトロンビンとなり、これが先の第I因子フィブリノーゲンをフィブリン(繊維上の血液凝固因子)に分解します。この凝固反応を外因性凝固といい、血液や血管にある組織因子の働きで第Ⅶ、第Ⅲ因子が活性化されて反応が始まります。このフィブリンはXIII(血液凝固安定化因子)を介してネット上に赤血球なども取り込み、傷口に確かな血栓を作ります。

 一方、新型コロナウイルス感染などで病原体が血液の中に入り敗血症という病気になると、組織因子が活性化され、小さな血栓があちこちにできます。凝固因子は消耗されるので、出血しやすくなります。これが播種性血管内凝固症候群(DIC)といわれるショックや死に至る重篤な病気です。

 このような第一次、続く第二次止血の機能が働き、出血から体を守ることができるのです。ちなみに凝固遺伝子の異常によって、第Ⅷ因子や第XI因子がなかったり活性が下がったりして止血作用を失うのが血友病です。ロシアの最後の皇帝ニコライ2世(1868~1918年)の子供で革命時に銃殺されたアレクセイ皇太子は生涯、この病気に苦しみました。

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東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。

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