【Q】 彼女から「口が臭くなった」と言われました。会社で受けるストレスは関係がありますか?
【A】 ほとんどの人が何らかのストレスを受けながら生活している現代社会では、ストレスが口臭や歯周病の原因になることが明らかになっています。
この連載で以前、口臭の原因のひとつに「ドライマウス」が関係していると書いたことがあります。ドライマウスは唾液の量が減って口腔内の自浄作用が働きにくくなる状態ですが、実はストレスや過度の緊張でも唾液の分泌量は減少するのです。読者の中にも、人前で話すときにすごく緊張して口の中で嫌な味や臭いがしたという経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
それと同じように、過度なストレスで唾液の分泌量が減って口臭の原因になっている可能性があります。過度なストレスは歯周病の進行に関与することもわかっていて、ラットを使った動物実験で「拘束ストレスを与えると、歯周組織の炎症を助長して歯槽骨の減少が起こる」とされています。
ストレスを受けると、ストレスホルモンである「カテコールアミン」と「コルチゾール」という2つの副腎皮質ホルモンが分泌され、そのひとつである「ノルアドレナリン」が歯周病原細菌の病原性を高めてしまうことがわかっています。
20代後半の若い患者さんの例ですが、検診を定期的に受けに来られていた真面目な方だったのに、あるときからパタッと来なくなったのです。3年ほどして診察したときには歯周病がかなり進行していて、本当に同一人物なのかと疑いました。
そこで治療に入る前にじっくり話を聞くと、仕事にうまく慣れることができず、上司ともうまくいかず、会社に行きたくないほどのストレスの中で生活していたといいます。「歯科医院に検診を受けに行けるような精神状態ではなかった」とのことでした。
この方は今は落ち着いて、また定期的にクリーニングを受けられていますが、現代社会における過度なストレスと歯周病は密接に関係していることを改めて感じさせられました。
(構成=小澤美佳)
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