緊急企画 新型コロナを正しく恐れる

陽性だと大騒ぎするが PCR検査で病気を判別してはいけない

新型コロナの検査装置
新型コロナの検査装置(岐阜県保健環境研究所提供)

 指定感染症に指定されたため騒がれるのは仕方がないが、新型コロナウイルス感染症には多くの誤解がある。「北品川藤クリニック」(東京・品川)の石原藤樹院長に聞いた。

 一番の誤解は「ウイルスがいなければ安全、いたら病気」と思い込んでいることだ。だから「検査」で病気を判別しようとする。それも、PCR検査で判別するものだから、陰性の人が再検査で陽性になる場合が報告され、大騒ぎになる。

「PCR検査とは微量の検体を採取してウイルス遺伝子の一部を増幅させることで、病原体の存在を調べる検査です。新型コロナウイルスに特徴的な遺伝子が検出されれば陽性、なければ陰性と判断されますが、検体の取り方によって結果が違う場合もあります。検査は万能ではないのです」

 実際、検出感度が低いPCR検査が感染拡大のリスクになったとの見方が中国で広がっている。中国・武漢同済病院でPCR検査と胸部CT検査の両検査を施行した1014例を解析した結果、前者で陰性とされた症例413例のうち308例が後者で陽性とされ、その妥当性が認められるなどCT検査の検出感度が高く有用とされたからだ。

 ウイルスなどの病原体は特定の細胞や臓器など感染先が決まっている。病原体の表面にある分子と人間の特定の細胞の上にある構造が「鍵」と「鍵穴」のようにピッタリと結合するようになっているのだ。

「新型コロナウイルスの感染に必要な細胞側の鍵穴はACE2受容体で、主に気道に存在します。だから、主に咽喉の粘膜を調べます。しかし、そこに新型コロナウイルスが存在することと、体内でウイルスが増殖して新型肺炎を起こす関係性が、現時点で証明されているわけではありません」

 実際、PCR検査で咽頭の粘膜に新型コロナウイルスの感染が確認されている8割の人は無症状か、症状があっても軽症な人たち。残り2割の人は比較的重い肺炎などを患い、亡くなる人もいる。中国の疾病管理予防センターのデータを見ると、その致死率は50歳以上から急激に上がり、80歳以上は14・8%に達しているが、それ以外の年齢層の人で亡くなるケースは少なかった。

 一般的に感染症は、“症状”がなければ病人と見なさないことを忘れてはいけない。

「例えばノロウイルス患者の中には、治療で症状が消えても1カ月以上腸内にノロウイルスが生息している場合が少なくありません。腸管から簡単にノロウイルスを排除できないからです。だからといって下痢などの症状がない感染者を徹底的に調べてノロウイルスがゼロになるまで隔離することはありません。治療により下痢症状が消えた感染者がその後、突発的に感染症を発生することはマレだからです」

 ただし、新型コロナウイルス感染症の患者が治療後、ノロウイルスの患者のような経過をたどるのか、わかっていない。だからこそ今はそれを慎重に見極める必要がある。逆に今わかっているのは持病のある中高年の感染リスクが高く重症化しやすいこと、若年層は感染しても軽症で済む一方で他人に感染させるリスクが高いことだ。

 いずれにせよ、感染症は感染経路を遮断すれば広がらない。今できることはくしゃみや咳でウイルスをまき散らしたり、ウイルスを触れた手であちこち触ることをやめることだ。

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