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鶏肉は余分な脂を取り除いて老化防止

鶏の白ワイン煮込み(左)とゴボウとの炒り煮
鶏の白ワイン煮込み(左)とゴボウとの炒り煮(C)日刊ゲンダイ
肉を食す(1)鶏

 日本人の平均寿命が世界でもトップクラスになった原因のひとつは、動物性タンパク質の摂取量の増加にあるといわれています。

 食べる肉の量が不足すると体内の筋肉や免疫機能などが低下し、老化に拍車がかかります。若い方でも肉が足りないと肌が乾燥するなど、見た目が老けた感じになりますし、特にシニア世代は植物性タンパク質と同じように動物性タンパク質を取ることを意識した方がよいそうです。肉は老化を遅らせる食材なのです。

 中でも鶏肉は抗酸化物質が豊富で、体を老けにくくします。メチオニンは食品から摂取しなければならない必須アミノ酸で、肝機能を向上させ、ストレスを緩和。豊富な不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを減らし、血液をサラサラにします。お付き合いで毎日のようにお酒を飲む男性には心強い味方ですし、コラーゲンは美容やアンチエイジング効果がありますから女性にもお勧めです。

 今回は鶏肉を使ったワイン煮と、ゴボウとの炒り煮です。皮の余分な脂や、身との間の黄色い脂は取り除きます。ワイン煮に使う鶏肉の皮の部分には穴を開け、外に流れ出た脂分は煮ている間にすくい取ります。栄養豊富な鶏肉をできるだけヘルシーに召し上がってください。

■白ワイン煮込み

《材料》 
◎鶏もも肉 2枚(余分な脂を除き、皮全体にしっかり金串などで穴を開ける)
◎塩  小さじ1+少々
◎白胡椒  少々
◎ニンニクのすりおろし  小さじ2分の1
◎オリーブオイル  大さじ2+大さじ1
◎レモン汁  大さじ3
◎薄力粉 適宜
◎セロリ 1本(筋を除き、5センチの長さに短冊切り)
◎ペコロス 4個(天地を切り落とし皮をむく)
◎マッシュルーム 8個(石づきを除いて汚れを落とす)
◎白ワイン  2分の1カップ
◎チキンスープ  1カップ
◎パセリのみじん切り  少々

《作り方》 
 下処理した鶏もも肉を横半分に切り、塩(小さじ1)、白胡椒、ニンニク、オリーブオイル(大さじ2)、レモン汁と合わせて15分マリネする。水気を抑え、茶こしを通して薄力粉を全面にふる。

 厚手の鍋にオリーブオイル(大さじ1)を中火で熱し、鶏肉の皮側から両面を香ばしく焼き、白ワイン、野菜、チキンスープを加え、15~20分、弱火で煮込み、味を見て、塩、白胡椒で調える。

 器に煮汁と共に盛り、パセリのみじん切りをあしらう。

■ゴボウとの炒り煮  

 鶏もも肉1枚の皮と脂を除き、繊維に沿って縦に包丁を入れ(写真)、大きめの一口大に切る。細めのゴボウ(30センチぐらい)を皮ごとよく洗い、一口大の乱切りにする。

 厚手のフライパンでゴマ油大さじ1を中火で熱し、鶏肉を炒め、ゴボウも加え、ショウガの千切り大さじ1と三温糖大さじ1を加え、照りが出るまで炒め、酒大さじ3、水1カップを加えたら蓋をせずに5~7分中火で煮る。

 醤油大さじ1を加え、煮汁がなくなるまで炒り煮にする。

▽松田美智子(まつだ・みちこ)女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事 」「調味料の効能と料理法」など。

繊維に沿って縦に包丁を入れる
繊維に沿って縦に包丁を入れる(C)日刊ゲンダイ
疲労回復、抗酸化作用を持つ特殊成分

 農林水産省の資料には次のように書かれている。

“畜産物1キロの生産には、その何倍もの飼料穀物を家畜に与える必要があることから、畜産物消費量が増加すると、急激に穀物需要が増加します”

 ちなみに、畜産物1キロの生産に必要な穀物量(トウモロコシ換算)は、牛肉で11キロ、豚肉で7キロ、鶏肉で4キロになる。肉(タンパク質)と穀物(炭水化物)の重さ当たりのカロリーは同じなので、牛肉1キロを食べるのはトウモロコシ11キロを食べるのと等価であり、エネルギー効率から見て、とても無駄が多い。

 もし将来、食糧不足になったら、肉など食べることは許されず、人間もトウモロコシを食べて飢えをしのぐ時代が来るのは必定である。つまり肉食はとてつもないぜいたく行為なのだ。肉のうちでも鶏肉はエネルギー効率からいって優等生。牛の約3分の1の餌で同じ量の肉になる。そして、栄養面からいっても優等生である。まず、なんといっても脂が少ない。

 鶏の胸肉は、鳥が羽ばたくためのムキムキな筋肉であり、ここにはイミダゾールジペプチドという特殊な成分が含まれている。イミダゾールジペプチドは、もともと渡り鳥が長時間、羽ばたくために用意されている物質で、乳酸の分解促進による疲労回復作用、活性酸素を抑える抗酸化作用を持つことが示されている。ぜいたくとはいっても肉はやっぱりおいしい。せめて、食べられるうちに味わっておきたい。

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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