緊急企画 新型コロナを正しく恐れる

日本で年間9.4万人が死亡「肺炎」とはどういう病気なのか

ダイヤモンド・プリンセス号の周辺で作業する関係者
ダイヤモンド・プリンセス号の周辺で作業する関係者(C)日刊ゲンダイ

 感染予防が困難になる中、新型コロナウイルスで注目すべきは肺炎だろう。どんな病気で、検査はどう行われるのか。弘邦医院の林雅之院長に聞いた。

 2018年の人口動態統計月報年計によると、肺炎は日本人の死因の第5位で9万4654人(全体の死因の6.9%)が亡くなっている。

「肺炎とは細菌やウイルス、カビなどの病原微生物が肺に感染して炎症が起きることを言います。通常は、病原微生物が体内に侵入しても、生体防御機構が働いて、鼻や咽喉などの上気道で食い止め、その先の気管や肺などの下気道への侵入は許しません。ですから感染しても風邪症状程度で抑えられるのです」

 生体防御機構とは、例えば、異物が侵入すると咳を出したり、気道上にびっしり生えた線毛が異物をキャッチしたりして体の外に押し出したりすることなどをいう。

 ところが、糖尿病や心臓病などの病気やステロイドなどの薬の使用、あるいは加齢により、生体防御機能は衰える。その結果、下気道への病原微生物の侵入を許す。高齢者や病気のある人に肺炎が多いのは、このためだ。新型肺炎も、心疾患や糖尿病のある65歳以上の死亡リスクが高いという。通常、肺炎の診断は、発熱や倦怠感、咳や痰などの症状や頻呼吸や頻脈などの身体所見、エックス線やCTによる胸部画像検査、血液検査などにより下される。

「肺炎が疑われたら、適切な薬を選択するため原因菌を突き止めます。しかし、培養検査には時間がかかるため、症状やその経過から原因菌を推定して治療を始めることがあります。そこで重要なのが胸部画像検査です」

 細菌性の肺炎は、呼吸のガス交換を行う部分である肺胞で肺炎球菌などの細菌が増殖し、炎症を起こす。そのため、膿性の痰が出るほか、胸部エックス線検査ではっきり指摘できるような濃い影が出現する。ウイルス性肺炎は肺胞壁やその周辺の“間質”と呼ばれる場所で炎症が始まることが多く、薄いすりガラス状の影しか出ず、軽症ではCT検査でないと分かりづらい。

■新型は急に悪化するので要注意

 一方、新型コロナウイルスによる新型肺炎は、初期には両側性に肺末梢のすりガラス状の影が出ると報告されている。風邪症状が10日ほど続き一気に重症化するという特徴がある。つまり、新型は他のウイルス性肺炎同様に、早期診断にはCT検査が有効ということだ。

「細菌性肺炎は、抗生物質により多くは症状が改善します。しかし、ウイルス性肺炎はインフルエンザウイルスなど、一部のウイルスしか治療薬がないのが現状です」

 ちなみに、インフルエンザから肺炎になる多くはウイルス性でなく、細菌性だ。インフルエンザで免疫力が低下したときに、肺炎球菌などの細菌が感染して肺炎が起こるからだ。

「肺炎は風邪症状があっても、喉の痛みや鼻水が出ないのが特徴です。その状態で1週間、咳が続けば肺炎を疑った方がいいかもしれません。とく高齢者は若者に比べて肺炎症状がわかりにくいので気を配る必要があります。高熱や咳が出ないことも多く、食欲不振と倦怠感を訴えるので調べたら肺炎だったというケースも少なくないのです。新型肺炎は急に悪化するので要注意です」

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