独白 愉快な“病人”たち

すぐに余命を考えました…松崎悦子さんが語る印環細胞がん

松崎悦子さん(C)日刊ゲンダイ

 それでも胃の全摘出になったのには事情があります。実は私、12年前に膵臓を半分取っていて、それに伴って脾臓を取ってしまったんです。今回は胃を3分の1残す選択肢もありました。ただ、「脾臓があれば脾臓から胃に確実に血液を送れますが、脾臓がないと血液がうまく送れず、残した胃が壊死してしまう可能性がある」と言われました。そうなったら再手術で全摘することになる。せっかく残してもそのリスクがあるならと全摘出をお願いしたのです。

 最初に「印環細胞がん」と告げられた時は、病気を調べてみてすぐに余命を考えました。「もしあと半年、1年と言われたら何をどうしたらいいのだろう」と……。ただ、自分の命というよりも家のことや事務所のこと、変な話ですが“通帳”のことなんかが気になって(笑い)。意外と冷静だったなと我ながら思います。

 今、事務所の社長をしている娘が、家に泊まり込んでくれてフォローしてくれたのは助かりました。また、アメリカに住んでいる息子の家族がたまたまビザの関係で日本に帰ってきてくれたこともいいタイミングでした。手術までの間、大人ばかりだと暗い話にもなりますが、幼い孫にはがんを内緒にしたので、いつも通りの賑やかな雰囲気で過ごせたのは精神的に救いになりました。

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