歯の疑問 ずばり解決!

「歯周組織再生療法」とは歯槽骨を再生する治療のこと

「歯周病」とは、歯茎でなく歯槽骨を失う病気のこと
「歯周病」とは、歯茎でなく歯槽骨を失う病気のこと

【Q】歯科医院で歯周病と診断されました。先生から「歯周組織」の再生処置があると聞きましたが、どのようなものでしょう?

【A】「歯周組織」とは歯槽骨と呼ばれる歯を支えている顎の骨のことです。歯周病は、原因となる歯石やプラーク(細菌)を取り除くことで病状を抑えることができますが、失った骨を完全に元に戻すことはできません。勘違いされている方も多くいますが、歯周病とは、歯茎(歯肉)ではなく歯槽骨を失う病気なのです。

 今回お話しするのは、この歯槽骨を再生する治療「歯周組織再生療法」です。

 方法はいろいろありますが、エムドゲイン(EMD)法やリグロス(塩基性線維芽細胞増殖因子)を用いた方法が主流となっています。

 処置としては、まず歯茎を切開し、歯石やプラークを取り除き、エムドゲインやリグロスといった材料を歯周病によって失われた歯槽骨の歯根面に塗り、歯茎を元の位置で縫い合わせます。術後すぐに再生するわけではなく、おおよそ半年ぐらいかけて歯槽骨が再生します。

 かつて歯周病によって奥歯を2本失われた60代の男性患者さんが「これ以上、歯周病で歯を失いたくない」と、僕の診療所にやって来ました。歯周組織再生療法の話をすると最初は信じていませんでしたが、「ダメもとでやってみます」と気持ちを切り替えてエムドゲイン法を受けてくださいました(その当時はエムドゲイン法しか選択肢がありませんでした)。

 レントゲン上で歯槽骨が増殖して吸収が止まったのを確認できたのは半年後で、それから5年経過していますが、結果として歯を一本も失わずに今もメンテナンスに通ってくださっています。

 ちなみにリグロスは日本で開発され、人間由来のタンパク質を人工的に生成したものが主成分で、2016年から健康保険適用となっています(エムドゲイン法は保険適用外)。歯周病の基本的な治療を終えてからしか保険適用できないために時間はかかりますが、先ほど紹介した患者さんのように一本でも多くの歯を残したい方は、ぜひ歯医者さんで相談していただきたいと思います。

(構成=小澤美佳)

北沢伊

北沢伊

1977年7月8日、長野県生まれ。斉藤歯科医院院長。2003年に日本大学松戸歯学部を卒業。同年から同院に勤務し、13年から院長に就任した。若手歯科医師に向けたセミナーの講師を務め後進の育成にも取り組んでいる。日本口腔インプラント学会専門医。千葉県歯科医師会所属。

関連記事