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豚肉の豊富な栄養を効率よく食べやすく摂取する調理法

豚肉マリネソテー(手前)と生姜焼き(C)日刊ゲンダイ
肉を食す(2)豚

 豚肉は栄養豊富で、肉質に癖がないため味もつけやすい。牛肉に比べて安価ですし、よいところだらけの食材です。

 まず、なによりビタミンB群が豊富です。中でも糖質がエネルギーに変わる際に不可欠な栄養素で、不足すると疲れを感じるビタミンB1は、あらゆる食材の中でもずばぬけて多く含まれています。つまり疲労回復効果があるのです。

 ビタミンB6やビタミンB12は、動脈硬化や認知症の発症にブレーキをかける作用があります。

 これらのビタミンB群は玉ネギやニンニクと一緒に摂取すると、より効率良く吸収されます。

 今回の2品、マリネソテーと生姜焼きにニンニクを使うメリットは、おいしくなることだけではないのです。

 肉をマリネする際のレモン汁、生姜焼きを漬け込む際の麹も、下味をつけることだけが目的ではありません。レモン汁の酸や、麹の発酵作用が肉を軟らかくしてくれます。

 厚みのある肩ロースの脂の部分に下包丁を入れるひと手間も忘れないでください。焼いたときに縮むのを防いでくれますから。

 豊富な栄養を、より吸収しやすく、よりおいしく、より食べやすくいただきたいものです。

■マリネソテー

《材料》
◎豚肩ロース  2枚(厚さ1.5センチ)
◎ニンニクすりおろし  大さじ2分の1
◎塩  小さじ1
◎オリーブオイル  大さじ2+大さじ1
◎レモン汁  大さじ2
◎白胡椒  少々
◎ローズマリー  2茎
◎薄力粉  適宜
◎バター  大さじ1

《作り方》
 豚肩ロースの脂の部分に下包丁を入れ、焼き縮みを防ぐ。ニンニク、塩、オリーブオイル(大さじ2)、レモン汁、白胡椒、ローズマリーを合わせ、豚肉に擦り込み、30分マリネする(写真)。水気を抑え、薄力粉を茶こしを通して全体にふる。オリーブオイル(大さじ1)をフライパンで中火で熱し、豚肉の両面を蓋をして焼く。焼き上がりに白胡椒をふり、バターをのせ、器に盛る。

■生姜焼き
 豚肩ロース(厚さ7ミリを6枚)を、すりおろした生姜大さじ1、ニンニクすりおろし小さじ2分の1、麹大さじ2、酒大さじ1、みりん大さじ1、醤油大さじ1と2分の1と合わせ15分漬ける。フライパンにごま油を熱したら、麹も一緒に両面を焼く。たっぷりのキャベツの千切りの上に盛り付け、キャベツとともにいただく。

▽松田美智子(まつだ・みちこ)女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事 」「調味料の効能と料理法」など。

豚肩ロースの脂の部分に下包丁を入れ、30分マリネする(C)日刊ゲンダイ
風味のもとになると脂分の味と香りは豚の餌に左右される

 豚肉、牛肉、鶏肉、ラム肉。もし、目かくしされて食べたとしても、何肉か言い当てることができる。つまり、それぞれ風味が違う。科学的に見るといったい何が一番違うのだろうか。

 どれも肉は基本的には筋肉のタンパク質が主体。タンパク質はアミノ酸が連結したもので、そのままの筋肉タンパク質には味はない。熟成させるとアミノ酸が遊離してきてうま味や甘味が増す。でもこれはどの肉でも原理は同じ。つまりタンパク質では差はでない。

 肉によって一番違うのは実は脂である。肉に入っている脂分は、タンパク質の隙間にただ脂がたまっているのではなく、れっきとした細胞(これを脂肪細胞という)が、エネルギー源としてため込んだ油滴である。

 そしてこの油脂は、動物細胞が自分で合成したものもあるが、かなりの部分は餌由来のものである。特に豚肉は、その豚がどんな食生活をしていたか、脂に如実に反映する。脂の味や香りは餌に左右されるのだ。だから、例えば豚の足を原料とするイタリア・パルマの特産生ハムでは、厳密にオーガニックな餌が規定されているし(そうでないとパルマハムを名乗れない)、スペインのガリシア産高級豚は栗の実で育てられる。自然の網の目はつながっているのだ。

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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