緊急企画 新型コロナを正しく恐れる

目からうつるは本当か? 中国では眼科医がバタバタ倒れる

中国・武漢の病院で新型コロナウイルスによる肺炎の患者の対応にあたる医療従事者
中国・武漢の病院で新型コロナウイルスによる肺炎の患者の対応にあたる医療従事者(C)新華社=共同

 新型コロナウイルスの新たな感染経路として目の粘膜が注目されている。新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の震源地となった中国・武漢で眼科医が相次いで新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなっているからだ。

 いちはやく新型肺炎へ警鐘を鳴らし、先月7日に新型肺炎で亡くなった中国人医師も眼科医で、同じ病院に勤務する眼科医が今月3日、9日に新型肺炎で亡くなった。

 中国の眼科医のグループは、結膜炎の患者の治療に当たる際はゴーグルを使うなど、十分に予防策を取るよう呼び掛けている。

 日本眼科学会認定専門医で「清澤眼科医院」(東京・南砂)の清澤源弘院長が言う。

「ウイルスが結膜を通して感染することはあります。例えば、夏にはやる、咽頭結膜熱(プール熱)や流行性角結膜炎はアデノウイルスと呼ばれるウイルスの感染が原因となる病気です」

 主に結膜炎、のどの痛み、発熱。結膜炎で充血や目の痛み、かゆみ、目やに、まぶしくなって涙が止まらないなどの症状が起こる。

「中国の情報を考えれば、新型コロナウイルスの体内侵入経路としても結膜を考えるのは当然だと思います。新型コロナウイルスはウイルス表面にある王冠様のスパイクが、ヒト細胞の表面にあるACE2受容体と結合することでヒトの細胞内に侵入。細胞を乗っ取り、増殖していきます。ACE2受容体は上気道以外に心臓や腎臓などに存在することがわかっていますが、気道の線毛などの生体防御機能が維持されている人では肺までウイルスが侵入しにくく、新型肺炎は発症しにくいと考えられていました。角膜や結膜の眼表面にこのACE2受容体があるかどうかはわかりませんが、中国の武漢へ調査に入りマスクはしていたが新型肺炎に罹患した中国人医師は、肺炎発症前の数日間、目の充血を経験したことから、目がウイルスを含む飛沫に暴露したのではないかと考えていたそうです。感染性を有する飛沫や体液は、結膜上皮に簡単に付着すると考えられるからです」

 従来から、新型コロナと遺伝子の80%が同じSARS(重症急性呼吸器症候群)の感染は、主に口、鼻の粘膜の飛沫への直接的、または間接的な接触により広がったといわれたが、保護されていない目からもSARSの感染が起こる可能性は指摘されていた。新型コロナウイルス感染症もまた、保護されていない目から感染する可能性があると考えられているのだ。

■手洗い、咳エチチケットに加え、目の防御も大切

 実際、日本眼科学会と日本眼科医会は先月27日に「新型コロナウイルス感染症と結膜炎について(国民の皆様へ)」という声明を出し、「手洗い、咳エチケット、体調管理の徹底に加えて、手で目を直接触らない」ように警告している。

「亡くなった中国の眼科医の先生方は新型コロナ感染者と正対していたわけで、患者さんの飛沫を直接目に受けた可能性が高い。とはいえ、これをもって患者さんに直接接する医療関係者や家族らの濃厚接触者すべてが、目を覆うゴーグルをかける必要があるとはいえません。しかし、コンタクトレンズをつけたり、はずしたりする際は、必ずその前に手をしっかり洗うことが必要です。花粉症では、花粉飛散のある季節には外出時にレンズ面の広い眼鏡をかけることが症状の軽減に役立つことが従来から指摘されてきました。市民が通勤電車など人混みの中に出掛けるときは眼鏡を使うようにするのもよいかもしれません」

 手洗い、咳エチケットの徹底管理に加えて、目のケアもやることだ。