緊急企画 新型コロナを正しく恐れる

食事で新型コロナに打ち勝つ 高齢者の6人に1人が低栄養

普段食べているものに1品増やす
普段食べているものに1品増やす(C)日刊ゲンダイ

 世界中で新型コロナウイルス感染症(COVID―19)が拡大する中、明らかになったのはこの病気の感染リスクがとくに高く、重篤になりやすいのは65歳以上の高齢者ということ。そして新型肺炎を含むウイルス性肺炎には有効な治療法がなく、患者本人の免疫力の強弱も生死の境目になるということだ。

 徹底した手洗い、咳エチケット以外にわれわれができることといえば体調管理だが、その基本となるのは「食事」だ。何をどう食べるべきか。時間栄養学の専門家で愛国学園短期大学非常勤講師の古谷彰子栄養士が言う。

「本来、高齢者は遺伝的にも感染症に強く、さまざまな病原体と闘い生き残った歴戦の勇者的存在です。ところが、加齢とともに感染症に対する抵抗性が落ちていきます。胸腺、T細胞系、B細胞系、NK細胞、樹状細胞、腸管の免疫能力などが機能低下するからです。その程度は個人差が大きく、各人が抱える基礎疾患の影響が強いのですが、咀嚼力低下や嚥下障害などからくる栄養不足の一面も少なくありません。低栄養の高齢者はまずはそれを解消しなければなりません」

 実際、2018年版の「国民健康・栄養調査」によると、6人に1人が低栄養とされ、不足が目立つもののひとつがタンパク質だ。

「低栄養状態は免疫機能を低下させ、感染症を引き起こしやすいことがわかっていて、免疫の中でも細菌やウイルスを攻撃するT細胞系に影響するといわれています。低栄養の高齢者でとくに不足しがちなのが、筋肉や各種酵素などの材料となるタンパク質と、エネルギー源となる炭水化物です。『タンパク質・エネルギー低栄養状態』(PEM)である高齢者は一人暮らしの人で1割未満、通院者の1割、入院者の3割、在宅受診者の3・5割というデータもあります」

■普段食べているものに1品増やす

 ①経済的理由で食事を制限している②1日2食以下③病気で食べ物の種類や量が変化した④果物・野菜・乳製品をあまり食べない⑤3杯以上のお酒を毎日飲む⑥1日3種類以上の薬を服用している⑦毎日1人で食事⑧半年で体重が約5キロ減った……などの人は栄養に問題がある可能性がある。とくに血液中のタンパクの一種で総タンパクの6割を占め、栄養・代謝物質の運搬などの働きを行う血清アルブミンの値が「3・5g/デシリットル以下」の場合も低栄養が疑われる。

「本来、男性は1850~2200キロカロリー、女性は1500~1750キロカロリーを毎日摂取する必要があります。しかし、どれくらい食べたらいいか、ピンとこないかもしれません。そのため、低栄養だと感じる高齢者は、普段からより多くの食材を食べることを意識しましょう。とくにお魚や肉、卵などのタンパク質を意識的に取るよう心掛けることが大切です。具体的には6枚切り食パンを1枚とサラダとコーヒーで朝食を済ませている人は、8枚切り食パンを2枚にして卵焼きをつける。肉が苦手な人はゴハンに肉や大豆を混ぜて食べる。豆腐のお味噌汁をつける……といったように無理して食べるのでなく、普段食べているものに1品増やす形で炭水化物やタンパク質を増やす努力をするといいでしょう」

 低栄養だからといってゴハンの量だけを増やすのはもちろん良くない。単に炭水化物の量が増えるだけでなく、その分だけタンパク質や脂質、ビタミン、ミネラル、マグネシウムなどの微量栄養素などの摂取が減る恐れがあり、感染症に対する生体防御能力が低下することにもつながりかねない。逆に炭水化物を一切取らないような過激なダイエットもエネルギー不足につながり、体温が低下して感染症に対する抵抗性を奪うことになる。「食べる時間帯により摂取量が変わってくることがわかっています。魚や大豆などのタンパク質はできるだけ朝取るといいこともわかっています」 いまや低栄養は高齢者だけの問題でもない。最近は全世代で偏食が目立ち、タンパク質不足の子供や若者、中高年も少なくない。高齢者はとくにだが、他の世代も新型コロナ対策は、まず不足しがちなタンパク質を意識的に取る。しっかりした食事改革から始めることだ。

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