専門医が教える パンツの中の秘密

「尿道・膀胱異物」は頻尿や膀胱結石をもたらす危険な行為

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「この世にあるもので、膀胱(ぼうこう)の中にないものはない」――。私が医学生だった頃、東大の有名な泌尿器科の先生から拝聴した言葉です。どういうことかというと、それだけ人は尿道から何でも物を入れてしまうということです。尿道から物を入れて取り出せなくなった状態を「尿道異物」や「膀胱異物」と呼びます。

 どうして尿道に物を入れてしまうのでしょうか。その原因で最も多いのが自慰(尿道オナニー)や性戯で、誤って中に入れてしまうのです。女性の場合は、男性パートナーが入れて遊んでいるうちに取れなくなることが多いようです。尿道・膀胱異物で受診する患者さんは珍しいことではありませんので、それだけ尿道オナニーをする人が一定数いるということでしょう。

 異物の種類は本当にさまざまです。糸類、体温計、鉛筆、針、ヘアピン、箸、綿棒、植物(ワラや茎など)、ストロー、コード類、ゴム製品、シリコーン製品、ロウ製品など。入りそうな物は何でも入れてしまうのです。アダルトグッズの中には「尿道ブジー」と呼ばれる尿道オナニー用のグッズがあります。実は尿道ブジーは、もともとは金属製の棒状の医療器具なのです。どんなときに使われるのかといいますと、尿道外傷、尿道炎、手術後などで尿道が硬く針穴のように狭くなる「尿道狭窄(きょうさく)」を起こしたときです。

 尿道狭窄の治療では内視鏡手術が中心ですが、治療後も再狭窄することがしばしばあります。そのような患者さんは尿道ブジーを使って定期的に尿道を拡張させるのです。また、尿道カテーテル(尿を出す管)を入れる必要のある患者さんで、尿道が狭い場合にも尿道ブジーを行います。

■開腹手術が必要になる場合も

 いずれにしても尿道オナニーは尿道を傷つけるので危険です。誤って異物を入れてしまった場合、そのときは症状がなくても、いずれ下腹部の痛みや血尿、頻尿などの症状が出てきます。さらに放置していると、異物を核として膀胱結石ができてしまいます。

 誤って靴ヒモを入れてしまった患者さんの症例では、半年くらい放置していて直腸(肛門)から膿(うみ)が出てきました。膀胱内に結石ができて、それが膀胱の内壁を傷つけ、炎症が直腸まで及んでしまったのです。こうなると開腹手術になります。

 尿道・膀胱異物は、早く受診すればたいがいは用手法(手で取る)か内視鏡(膀胱鏡)で取り除けます。放置していると大事に至るので、十分注意してください。

尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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