緊急企画 新型コロナを正しく恐れる

高血圧は新型コロナ重症化リスク増 現地中国人医師が警告

写真はイメージ
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 新型コロナウイルス感染症(COVID―19)について新たなことがわかってきた。2カ月前から武漢に派遣された、中国の北京協和医科大学病院集中治療室の教授が、「高血圧患者が新型コロナウイルスに感染した場合、死亡する確率が最も高い」と米大手メディアに語ったという。

 糖尿病などの生活習慣病や心臓病などの基礎疾患を持つ患者はCOVID―19になりやすく、重症化しやすいとされてきたが、高血圧が最も危険な因子だというのだ。実際、1月に武漢で死亡した170人の患者の半分近くが高血圧を患っており、臨床的にその傾向がはっきりしたという。

 実は世界的権威のある医学論文雑誌「ランセット」「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表された中国からの論文でも「最大3倍の重症化リスクがあった」としている。

 新型コロナウイルスは、2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)のコロナウイルスと似ている。遺伝子の類似性は80%程度あり、ヒトの気道、心臓、肺、血管、腎臓などの細胞に存在するアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合して細胞に侵入するのも同じだ。

 新型コロナがSARSよりも感染力が強いのは、新型の方がACE2の発現を活発にする酵素を刺激するため、より細胞に侵入しやすいからだと考えられている。東邦大学名誉教授で平成横浜病院健診センター長の東丸貴信医師が言う。

「ACE2は炎症や酸化ストレスから心臓、腎臓や血管を保護する働きがあり、血圧を上昇させ心臓血管を傷めるアンジオテンシンⅡを作るACEと反対の作用で体を守ると考えられています。そして、ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)やACEI(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)を使用している高血圧症の人やチアゾリジン系糖尿病薬を服薬している2型糖尿病の人は、ACE2が増えているとランセットに報告されました」

 また、ACE2は喫煙や炎症などにより肺細胞表面で増加する。本来は、体を守ると考えられているACE2を受け皿(受容体)として、新型コロナウイルスは体内に侵入するのだ。

「従来の研究でも、高血圧症の人がなぜ重症化するのか明確な説明はありません。ただ、血圧の負荷が増すと心臓の機能が低下し、冠動脈や末梢動脈も硬化し、腎動脈の硬化と機能低下などが進み、不整脈や冠動脈疾患も多く見られます。高血圧症の人が新型肺炎になれば、このストレスにより、左心不全、心房細動、下肢動脈虚血、心筋梗塞、脳梗塞、腎不全などを発症しやすいことは想像できます」

 また、新型肺炎は間質性肺炎と似ており、肺動脈圧が上昇して右心に負担がかかれば、肺高血圧症と両心不全となるリスクも高まると考えられる。むろん、この「新型コロナは高血圧の人が感染すると致命的になりやすい」は、現時点では確定した医学常識ではない。ただ、ACEIやARBといった高血圧症の薬やチアゾリジン系糖尿病薬を飲んでいる人、喫煙を続けている人が新型肺炎にかかりやすく重症化もしやすい可能性は否定できない。そのことは覚えていた方がいい。

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