病気を近づけない体のメンテナンス

骨<下>骨折で寝たきりにならない栄養・運動・睡眠のコツ

栄養素は食品から摂取
栄養素は食品から摂取(C)日刊ゲンダイ

 骨は40代以降になると、加齢とともにだんだん弱くなる。新しい骨と古い骨を入れ替えるために行われている、骨を作る「骨形成」と骨を壊す「骨吸収」の骨代謝のバランスが崩れていくからだ。それを維持するためには、バランスの取れた食事と運動、規則正しい生活などがポイントになる。山瀬整形外科(神奈川県相模原市)の長谷川亜弓医師が言う。

「骨を強くするには、骨の材料となる『カルシウム』や『タンパク質』の摂取はもちろん、カルシウムの吸収を高める『ビタミンD』、また『亜鉛』や『マグネシウム』などのミネラル分も必要です。それらの栄養素が十分な状態で、運動や体を動かすことで骨に負荷をかけて刺激することにより、新しくて強い骨を作ることができるのです」

 偏食の人はサプリメントで栄養素を取ればいいと思いがちだが、それは間違い。一般的にサプリメントは食品と一緒に摂取しないとほとんど吸収されないので、できるだけ食品から栄養素を取った方がいいという。

 ビタミンDは、サケやサンマ、カツオ、イワシ、メザシなどの魚類、キクラゲやシイタケなどのキノコ類に多く含まれるが、日光を浴びることでも体内で作られる。紫外線が当たると、皮下脂肪にあるコレステロールがビタミンDに変化するのだ。

 日光浴は、夏なら木陰で30分ほど、冬は日なたで1時間程度当たるのがいい。日焼け止めクリームを塗ると紫外線を吸収しないので、少なくとも手には日焼け止めを塗らないようにする。屋内でガラス越しに日光浴しても紫外線を十分に吸収できない。窓を開けるか、屋外に出て日光を浴びるようにしよう。

 運動はどのようなメカニズムで骨を強くするのか。

「骨には重力を感知するセンサーがあり、感知した骨細胞が新しい骨を作る指令を出し、カルシウムを呼び寄せます。その指令により破骨細胞が古い骨を壊し、新しい骨を作る骨芽細胞が活性化してカルシウム沈着が促進され、骨密度(骨量)が上昇します。ですから宇宙飛行士が無重力の宇宙にいると、地球上にいるときの10倍の速さで骨密度が減るといわれます」

 骨を強くする運動は、「骨に刺激を与える運動」で週3回、1回30分くらいの頻度でやるといい。具体的には「ウオーキング」、階段や踏み台を使った「昇降運動」など。きつければ休みながらでもいい。健康な人なら縄跳びなどの「ジャンプ」、「四股踏み」なども効果的だ。

■「いつの間にか骨折」を疑うべき3項目

 膝痛があるようなら、爪先立ちになり、そのままストンとかかとを床に着ける「かかと落とし」を1日50回くらいやるのであれば、膝への負担も少なくてできる。自転車こぎや水泳などは体にはいい運動だが、重力が骨にかからないので骨を強くする運動とはいえないという。

 次に重要なのは「規則正しい生活」だ。骨を強くするには「睡眠」が大きく関係しているからだ。

「睡眠中に分泌される『成長ホルモン』は、骨に働きかけて骨を強く成長させる作用があります。このホルモンは入眠後3時間までの深い睡眠時(ノンレム睡眠)に多く分泌されるので、少なくても4時間以上の睡眠が必要になります。また、目覚めてから14~16時間後に分泌が始まる、睡眠ホルモンと呼ばれる『メラトニン』は骨芽細胞を活性化して破骨細胞の働きを抑える作用があります。そのため、決まった時間に睡眠を取ることが大切なのです」

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