上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

患者を守るためにも医師の「働き方改革」は重要な課題

順天堂大学医学部心臓血管外科の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 加速する高齢化にともなって、近年は患者さんがどんどん重症化していますから、それだけ医師の負担も増えています。だからこそ、なおさら医師の働き方改革が大切なのです。

 順天堂医院でも、勤務時間を把握するためにタイムカードが導入されました。私も日々タイムカードをつけています。また、若手医師の研修時間をなるべく減らすような体制の整備も進んでいます。もし過重労働と判断されると、労働基準監督署から指導が入ります。

 ただ、医師の働き方改革を推進すると同時に、考えなければならない問題も山積みです。中でも、人件費の増額に悩んでいる医療機関は多いでしょう。

 たとえば、順天堂医院のような1000床を超える大学病院では、働き方改革を実践しつつこれまでと同じような医療水準を保つためには、医師の給与だけで年間十数億円ほどの人件費が余分に必要になるといわれます。医師一人一人の労働時間を短くする分だけ、新たな人員を雇う必要があるからです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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