医者も知らない医学の新常識

内臓に持病があっても…血圧の薬をやめると寿命が縮む?

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 血圧を下げる薬を降圧剤といいます。降圧剤には多くの種類がありますが、その中でも使用頻度が高いのが、ACE阻害剤とARBと呼ばれている薬です。

 この2種類の降圧剤は、いずれもレニン・アンジオテンシン系という、体の水や塩分を保つ仕組みを抑える薬です。本来は必要な仕組みなのですが、高血圧の患者さんでは、この仕組みが強く働くことにより、血圧が上がり、心臓などの臓器にも負担がかかることが分かっているからです。

 ACE阻害剤やARBは優れた効果を持つ薬ですが、腎臓を流れる血液を減らすような働きもあるため、腎臓機能が高度に低下したような状態では、それがより悪化する可能性を考えて、中止するか他の薬に変更することが多いのが実際でした。

 それでは、腎機能の低下を理由に降圧剤を中止することで、体に悪い影響はないのでしょうか?

 今年の米国医師会の内科専門誌に、それについての研究結果が報告されています。アメリカの大規模な住民データを解析したところ、腎機能が高度に低下したことを理由に、ACE阻害剤やARBを中止すると、中止しない場合と比べて、死亡するリスクも、心臓病などの病気になるリスクも、いずれも増加していたのです。一方で薬を中止しても、透析が必要となるような腎不全になるリスクには、ほとんど差はありませんでした。内臓に持病がある人が血圧の薬をやめる時には、より慎重に考えた方がよさそうです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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