パンデミックの基礎知識 人間同士の感染を止めても根絶できない

2014年に鳥インフルエンザが確認された養鶏場(C)共同通信社

■ウイルス感染症はなぜ感染拡大するのか

 それにしても、病の皇帝「がん」を手なずけるほどの高度な医療技術を持ち、公衆衛生も向上しているのに、なぜ人類を脅かすウイルス感染症は増えているのか? 

「かつてないほど人類が動物との距離を縮めたことが原因だと言われています。都市化が進み、動物しか住んでいなかった山の中にも人が住むようになったため、すみかを失ったコウモリがウイルス入りの糞尿を住宅地にばらまいていることも報告されています。また、人口の急増で動物性タンパク質の食料の需要が急増したことで、狭い場所に多くの豚や鳥などが飼われるようになり、そこに病原性の高いウイルスに侵された鳥の死骸を食べたイノシシなどが侵入して一気に病気を拡大するなどの現象が起きているのです」

 しかも、以前は動物から人に感染しても都市化が進んでおらず交通も不便だったため人から人へ感染するには時間がかかり、それまでに対策が取られたが、いまは都市化に加えて鉄道や航空機により大量高速輸送が可能になり、ウイルスも人間も移動がラクになり、人から人への感染が容易になった。そのため、感染爆発の危険度が増しているのだという。

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