Dr.中川 がんサバイバーの知恵

人気ロボット手術「ダヴィンチ」より放射線を選ぶべき基準

漫才師のトミーズ雅さん(C)日刊ゲンダイ

■1台2億円超の高コストが壁に

 ただ、その導入費用は1台2億円以上。それでも診療報酬は従来の手術と変わりません。病院によっては、本来の適応範囲を超えて、ダヴィンチ手術の症例数を稼ごうとすることもありえるでしょう。

 たとえば、前立腺がんは、メスで切らずとも、放射線で根治でき、機能温存も可能。最新の定位放射線なら1回90秒ほどを5日かけて5回照射で完了。治療は通院で、医療費は3割負担なら20万円ほど。一方、手術は3割負担で約45万円。手術は経過が良好でも1週間程度は入院です。

 そんな背景があると、患者の利益より病院の利益が優先されないとも限りません。大腸がん、胃がん、血液系のがんなどは放射線で治療しませんが、放射線での治療が可能ながんは、放射線とてんびんにかけることが大切。今年4月からは食道がんと膵臓がんもダヴィンチの適用に。この2つにも、その考え方が大事でしょう。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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