上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

便秘を招く生活習慣が突然死するリスクをアップさせる

順天堂大学医学部付属順天堂医院心臓血管外科の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 人間の腸内に100兆個ほど存在している腸内細菌が心臓疾患の発症に関係していることを前回お話ししました。腸内環境が悪化して腸内細菌のバランスが崩れると、動脈硬化を促進してしまうのです。

 食生活のアンバランスさが続くと、高血糖、高血圧、高コレステロール、肥満といった心臓疾患のリスク因子である生活習慣病につながり、便通異常も招きます。

 つまり、排泄が不安定で便秘がある人は心臓疾患を発症するリスクが高くなってしまうといえます。

 まだ確かなエビデンス(科学的根拠)があるとはいえませんが、海外では「便秘の重症度が上がれば上がるほど心血管イベントが増える」という報告があります。日本でも、便秘の期間がどれくらい長く続くと、心臓疾患がどのくらいの割合で増えるのかといった研究報告がこれから出てくるでしょう。

 便通異常には、食べ物が大きく関係しています。いわゆるドカ食いや偏った食生活は肥満のもとである内臓脂肪を増やしてメタボを増強するだけでなく、腸内細菌のバランスを崩して腸内環境を悪化させます。また、ダイエットと称し食生活を不安定にするのは排泄を不安定にすることでもあります。腸内細菌のバランスを考えると良いとは言えません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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